フォルクスワーゲンらしい味わい ID.7 プロへ試乗 EV技術的にはクラスをリード

公開 : 2024.02.03 19:05  更新 : 2024.09.04 11:19

BMW i5やメルセデスEQEをターゲットとする、電動サルーンのID.7 インフォテインメントは大幅に改善 快適性と運動神経との好ましいバランス 英国編集部が評価

ターゲットはBMW i5やメルセデスEQE

故フェルディナント・ピエヒ氏が、フォルクスワーゲンのトップにいた時代のモデルへ、ID.7は似ているように思う。アルテオンより大きい電動サルーンがターゲットとするのは、格上のプレミアム、BMW i5やメルセデス・ベンツEQEだからだろう。

もちろん、内包する技術は異なるが、込められた野心は近いような気がする。そして、フォルクスワーゲンは新しい技術を我が物にしたようだ。

フォルクスワーゲンID.7 プロ・マッチ(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.7 プロ・マッチ(英国仕様)

エネルギー効率に優れ、航続距離の長いバッテリーEVをデザインするなら、背の高いSUVではなく、空力特性で有利なサルーンの方が望ましい。ホイールベースを長くすれば、車内空間も稼げる。実際、ID.7の空気抵抗を示すCd値は、0.23と小さい。

また、同社第2世代の電動パワートレインを搭載し、優れた動力性能を獲得。パッケージングは良く練られ、運転しやすい。インフォテインメント・システムも新世代で、運転支援システムも高機能といえる。

動的な特徴は、フォルクスワーゲンらしいバランス。乗り心地はマイルドで、ステアリングは正確で安定感がある。自然に運転でき、ストレスを感じにくい。上級サルーンに求められる、熟成された完成度にある。

駆動用バッテリーは77kWh。新開発の駆動用モーターとインバーターの効果で、航続距離は616kmがうたわれる。エントリーグレードの「プロ」でも。

2024年後半に登場予定のプロSには、86kWhのバッテリーが載り、航続距離は640kmを超えるという。四輪駆動で340psを発揮する、ID.7 GTXも控えている。

大幅に改善したインフォテインメント・システム

ID.7のプラットフォームは、同社のID.4やID.バズと同じMEB。流線型のシルエットをまとい、全高は印象的なほど抑えられているが、内燃エンジンで走るサルーンと並ぶと腰高に見えてしまうことも事実だ。

車内空間は、しっかり確保されている。着座位置は適度に低く、身長の高い大人でも、フロントシートへ快適に座れる。メルセデス・ベンツEQEのように、サイドウインドウが低めに感じることもない。

フォルクスワーゲンID.7 プロ・マッチ(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.7 プロ・マッチ(英国仕様)

リアシート側でも、前かがみになる必要はない。ヒョンデ・アイオニック6は高さ方向で限定的だが、こちらは居心地が良い。大きなリアハッチからアクセスする、荷室容量は532L。床下にも収納空間が設けられている。

ダッシュボードの中央には15.0インチのタッチモニターが据えられ、その下部にエアコン用のタッチセンサーが並ぶ。ドライバーの正面には、メーター用モニターに加えて、カラーで投影される拡張現実対応のヘッドアップ・ディスプレイも備わる。

筆者は、エアコンや運転支援システムのインターフェイスは、タッチモニター内に統合しない方が良いと考えている。それでも、ソフトウエアは大幅に改善され、従来より使いやすくなった。

頻繁に操作する機能は、固定表示のメニューバーへ登録できる。ホーム画面のアイコンも切り替え可能で、必要な項目を常時表示させられる。ちなみに、このシステムは、同社の他のモデルへ順次実装されるそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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