フォルクスワーゲンらしい味わい ID.7 プロへ試乗 EV技術的にはクラスをリード

公開 : 2024.02.03 19:05  更新 : 2024.09.04 11:19

走り味は可不足ない、ザ・フォルクスワーゲン

内装の素材は、i5に並ぶとはいえないだろう。高級感を強く感じさせる部分はないといえ、触れてソリッドさを伝えるような、スイッチ類はそもそも少ない。プレミアムモデルというより、ゴルフのトップグレードといった印象がある。

試乗車には、オプションのエルゴアクティブ・シートが据えられていたが、感心する座り心地だった。ソフトでありつつサポート性が高く、ベロア素材で風合いも好ましい。ヒーターとベンチレーションも内蔵する。

フォルクスワーゲンID.7 プロ・マッチ(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.7 プロ・マッチ(英国仕様)

発進させてみると、動的な印象は、可不足のないザ・フォルクスワーゲン。駆動用モーターが充分なトルクを発生し、100km/h前後まで意欲的に加速していく。サスペンションはしなやかで、ステアリングは落ち着いていて正確だ。

ただし、回生ブレーキは、さらに開発が必要かもしれない。Bモードを選ぶと、強力な減速感を得られるものの、惰性走行やワンペダルドライブには対応していない。

カーブや交差点が接近すると、自動的に回生ブレーキが強くなるシステムが搭載されている。これを無効にすると、アクセルオフでスルスルと進むことはできる。ブレーキペダルを踏んだ感触は少し人工的ながら、効きは滑らかだ。

シャシーマウントにラバーを採用し、減衰力が変化するアダプティブダンパーが組まれ、乗り心地は上質。硬さは15段階から調整できる。ソフト側へ振ると浮遊感が増し、垂直方向の揺れが若干大きいようだった。

快適性と運動神経との好ましいバランス

ステアリングは、最新の可変レシオシステムにより、切り始めでの機敏さが高まった。デフォルトのドライブモードでは、重み付けや反応の素早さは平均的だ。

履いていたタイヤは、ブリヂストン・ポテンザスポーツ。グリップは高く、高速でコーナーへ侵入しても、ボディは水平を保つ。スタビリティ・コントロールの制御も巧妙で、スポーツ・モードを選ぶと、僅かに後輪駆動だと実感できる。

フォルクスワーゲンID.7 プロ・マッチ(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.7 プロ・マッチ(英国仕様)

これらが相乗し、落ち着いた身のこなしと正確で敏捷な操縦性を両立させている。濡れたフランスの路面では、パワーの制御に手を焼いていた印象もあったが、乾燥した英国の一般道では、そんな振る舞いは感取されなかった。

遮音性は高く、クラストップ水準ではないものの、不満はない。手のひらへ伝わる感触は薄めながら、運転も楽しめる。明確に心地良いと表現できるマナーで、多くのドライバーは、快適性と運動神経とのバランスを好ましいと感じるはず。

電費は、今回の試乗では6.1-6.4km/kWh前後。現実的な航続距離は、480km以上と考えていいだろう。BMW i5やアイオニック6を軽く凌駕する数字といえ、アップデートを受けたモデル3に並ぶ。86kWhの容量なら、更に伸びることになる。

試乗車の英国価格は、5万2600ポンド(約978万円)。かなり高価に思えるが、残価設定型の月払い金額で比較すると、クラス内での競争力は低くないようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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