「最初」の受賞車:ローバー2000 革新的リアハッチ:ルノー16 先進のロータリー:NSU Ro80 欧州COTYの1番を選ぶ(2)

公開 : 2024.02.11 17:46

欧州カー・オブ・ザ・イヤーが始まってから2024年で60年 これまでの受賞車で、ベスト・オブ・ベストはどれか? 英国編集部が1960年代からイッキ乗り

欧州COTYで最初の受賞車 ローバー2000

欧州COTY代表の1台、ローバー2000。スティーブ・クロプリーへ印象を聞く。「静寂性と低速域でのマイルドな乗り心地が、最大の魅力ですね。高速道路も快適に巡航できます。しかし、この頃の同価格帯のモデルは、より優れたエンジンを積んでいました」

マット・プライヤーも同調する。「乗り心地は素晴らしい。でも、それ以上に響くところはないかもしれません」

歴代の欧州カー・オブ・ザ・イヤー受賞モデル 1960年代の3台
歴代の欧州カー・オブ・ザ・イヤー受賞モデル 1960年代の3台

レイ・ハットンは、シトロエンDSに影響を受けた設計を評価しつつ、フランス車のような革新性はないと話す。「快適なキャビンを備えた、発展途上のエグゼクティブ・サルーンです。走りは重い。さほど速くありません」

それでは、1966年の欧州COTY、ルノー16の印象は。当時は98ポイントを獲得し、2位のロールス・ロイス・シルバーシャドウと3位のオールズモビル・トロネードへ、大きく差をつけている。

16は、コンパクト・ハッチバックの原型を確立し、市民へ普及させた。15年も続いた生産期間で、驚くほどの成功を収めてもいる。

スタイリングを描き出したのは、デザイナーのガストン・ジュシェ氏。ルーフラインが高く、3枚のサイドガラスが並んだサイドビューは、非常にフランス車らしい。

未舗装の道を許容し、長距離移動も快適。家族で週末旅行も楽しめる自動車として、成長する需要をしっかり支えてきた。

革新的な利便性を生み出したリアハッチ

エンジンは、滑らかに回りトルクが太いオーバーヘッド・バルブの4気筒。排気量は1.5Lか1.6Lを選べ、サーモスタット制御の冷却ファンと、効率的な冷却系が組まれていた。

前輪駆動で、当初のトランスミッションは4速マニュアルか3速オートマティック。サスペンションは前後とも独立懸架式で、トーションバーが支え、快適な乗り心地を実現していた。カーブでのボディロールは、面白いほど大きかったが。

ルノー16(1965〜1980年/英国仕様)
ルノー16(1965〜1980年/英国仕様)

ボディの特長といえたのが、今では当たり前のリアハッチ。巧みなリアシートの設計と相まって、60年前には革新的といえる利便性を生み出していた。

今回ご登場願った16は、リチャード・アレン氏の1970年式。後期型のエンジンに5速MTが組まれ、パワーステアリングも装備されている。1966年に審査を受けた仕様ではないが、本質は変わらない。3名の審査員は、好印象を抱いたようだ。

浮遊したようなソフトな乗り心地と、快適なシートを評価するのはレイ。全体的に古く感じるものの、大きなボディロールを愛すべき個性だと表現するのはマットだ。

往年のルノー車らしい、玉座のように心地良いシートと活発なフィーリングに、スティーブは喜ぶ。だが、「ライバルの強みをカバーするには、後継モデルでの更なる努力が必要といえます」。と、16の課題にも触れる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

欧州COTYの1番を選ぶの前後関係

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