FFの先駆車:フィアット128 大きく古い塊:メルセデス・ベンツ450SE 911の後継ではない:ポルシェ928 欧州COTYの1番を選ぶ(3)

公開 : 2024.02.11 17:47

欧州カー・オブ・ザ・イヤーが始まってから2024年で60年 これまでの受賞車で、ベスト・オブ・ベストはどれか? 英国編集部が1960年代からイッキ乗り

1970年代 フィアット128/ポルシェ928メルセデス・ベンツ450SE

1970年代が始まる頃には、良いクルマと悪いクルマ、信頼性や経済性などを客観的に指し示す賞として、欧州COTYは地位を確立。自動車メーカーは受賞を意識し、マーケティングに用いられることが増えていった。

欧州市場には小さなハッチバックが増え、信頼性が高く安価な日本のモデルが存在感を強めていった。こんな変化の中で、特に先見的だったといえたのが、前輪駆動レイアウトの拡大だろう。

歴代の欧州カー・オブ・ザ・イヤー受賞モデル 1970年代の3台
歴代の欧州カー・オブ・ザ・イヤー受賞モデル 1970年代の3台

1970年の受賞モデル、フィアット128も、もちろん前輪駆動だ。オリジナルのBMCミニは、10年以上前にFFを採用していたが、イタリアのメーカーはより現代的な技術との融合へ成功していた。

SOHCの1.1L 4気筒エンジンは、トランスミッションと並んで、ボンネット内へ横向きに搭載。サスペンションには、マクファーソンストラット式を採用。トルクステアに対応するため、左右のドライブシャフトはあえて長さが変えられていた。

フロント側には、ディスクブレーキを装備。冷却ファンは、サーモスタットで制御された。ステアリングラックは、ラック&ピニオン式だった。

これらの設計をまとめたのが、フィアットの伝説的技術者、ダンテ・ジアコーサ氏。車両面積の80%が、乗員と荷室空間に充てられるという、見事なパッケージングを完成させていた。その後の前輪駆動モデルへ、多大な影響を与えたことは間違いない。

スペース効率に驚く 昔のフィアットは楽しい

ただし、128は塩分に弱い。雪が振る英国では簡単に錆び、残存自体が非常に珍しいが、温かい欧州大陸なら状態の良い例が見つかる。今回の左ハンドル車は、ネザーランド(オランダ)から自走でやって来た。

オーナーは、トン・ファン・ザイル氏。ミント・ポジターノ・イエローのボディカラーが鮮やかな、初期型だ。「現代のモデルのように運転できます」。と、審査員のレイ・ハットンが微笑む。

フィアット128(1969〜1985年/英国仕様)
フィアット128(1969〜1985年/英国仕様)

「スペース効率の良さには驚きます。スペアタイヤは、ボンネットの中。アウトビアンキA112に大差をつけて受賞した時のことが、思い出されますね」

マット・プライヤーも運転を楽しんだ。「とても正確に操縦できます。シフトレバーの動きや、運転席からの視界も素晴らしい。小さいので、軽快に走ります」

「車齢を感じさせないほど車内は広く、ステアリングが好印象です。ボクシーなシルエットですが、スタイリングも見事。正確なステアリングとシフトフィールで、昔のフィアットは楽しいですね」。スティーブ・クロプリーも満足気だ。

続いて、大きなメルセデス・ベンツへ乗り換える。このW116型は1972年に発売されたが、少し遅れて登場した450SEと450SELが、1974年の欧州COTYを受賞している。2位のフィアットX1/9と、3位のホンダシビックを破って。

その頃、欧州COTYで重視していたのが安全性。メルセデス・ベンツは、その正解を導き出していた。ボディは強化され、前後にクラッシャブルゾーンを確保。ダッシュボードにはパッドが巻かれ、テールライトには凹凸のリブが入り汚れを抑えた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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