FFの先駆車:フィアット128 大きく古い塊:メルセデス・ベンツ450SE 911の後継ではない:ポルシェ928 欧州COTYの1番を選ぶ(3)
公開 : 2024.02.11 17:47
ぶつかっても頼もしかった高級サルーン
保守的なスタイリングを手掛けたのは、フリードリッヒ・ガイガー氏。450SEの最高出力は225psと、当時としてはかなりのパワフルさで、0-97km/h加速を8.5秒でこなした。209km/hの最高速度が、審査員を夢中にさせた。
前後とも独立懸架式のサスペンションには、アンチダイブ機能を備え、リアにはトレーリングアームを採用。上位グレードには、ハイドロニューマチック・システムが組まれた。450SEはパワフルな高級サルーンだったが、快適で、ぶつかっても頼もしかった。
今回ご協力いただいたのは、ゴハール・ラジャ氏。彼の450SEは、後期型だ。
「燃料計には、タンクと書かれていますね。表示は正確ではないようです。シートはかなり滑ります。コーナーで楽しいとはいえません。ゆったり動く、船のようですね」。と、マットが感想を口にする。
スティーブは、当時の試乗テストの記憶を蘇らせる。「想像以上に、古びた印象です。あの頃は、先進的だと感じたのですが。古風なシートと、レスポンスの良くないステアリングに驚いてしまいました。それでも高品質で、耐久性は高いようですが」
レイが続ける。「確かに、良く設計されていますね。ガッシリしている印象はあります。大きく古い塊といった感じ。欧州COTYに選ばれた、最後の高級車でした」
ファンが911を選び続ける理由がわかる
3代目は、15台のノミネート車両で唯一のスポーツクーペ、ポルシェ928。911より実用的で安全なポルシェとして、メルセデス・ベンツやBMWを競合に見据えた、グランドツアラーだ。
安全性だけでなく、快適性や効率性、人間工学にも配慮。価格は高かったが、エキゾチックな雰囲気を漂わせ、欧州COTYに選出されている。
オーバーステアを抑えるリア・サスペンションの設計を受け、4.5L V8エンジンはフロントに搭載。高速域における、操縦性の不安は軽減されていた。
トルクチューブと呼ばれるケースでエンジン側と結ばれた、リアのトランスミッションで、前後の重量配分はほぼ理想値の51:49。220km/h以上の最高速度も叶えていた。
新鮮なスタイリングを描き出したのは、ヴォルフガング・メビウス氏。空力を意識した滑らかな面処理で、リトラクタブル式のヘッドライトが走行時の空気抵抗を抑えた。ドアとボンネット、フロントフェンダーはアルミ製で、重量も抑えられている。
1978年の最高ポイントを獲得した928は、今も審査員を感動させるだろうか。「操縦系が重く、挙動が優れるとはいえません。見た目ほど、運転体験は良くないといえます」。とスティーブが辛口コメントを残す。今回の例は、後期型のS4なのだが。
「928が後継モデルになる予定でしたが、多くのファンが911を選び続けた理由がわかります」。とレイも正直な心象を話す。当時の審査員は、ヴァイザッハ・アクスルと呼ばれる、巧妙なサスペンションを評価したのかもしれない。
「確かに重いですね。エンジンもATも、反応は鋭くありません。コーナーではフラットで、見た目はカッコいいと思います。でも、911の代替モデルではないですし、COTYに相応しかったのかもわかりません」。と、マットも顔を曇らせる。
必然的に1970年代の代表には、フィアット128が選ばれた。
協力:ポルシェUK社