フォルクスワーゲンを「ナイスガイ」にしたい 次世代EVの目指すもの

公開 : 2024.01.31 06:05

・フォルクスワーゲンを「ナイスガイ」に戻す。その真意とは?
・ゴルフ7を手掛けたデザイナーへ独占インタビュー。新型EVにかける想い。
・グローバルデザインはもう古い? 新しいデザインはどう作る?

愛ある「ナイスガイ」への回帰

フォルクスワーゲンのデザイン責任者であるアンドレアス・ミント氏は、「ID.2all」と「ID.GTI」という2台のコンセプトカーにより、親しみやすいブランドを目指すという同社のビジョンを表現した。

「愛されるブランド」を目標とするフォルクスワーゲンは、2025年に両コンセプトの市販車を発表する予定だ。

フォルクスワーゲンID.2allコンセプト
フォルクスワーゲンID.2allコンセプト

ミント氏はゴルフ7(第7世代)の主要デザイナーの1人であり、グループ内での移籍を経てフォルクスワーゲンに戻ってきた。アウディでエクステリアデザインを指揮し、ベントレーではデザインチーフを務めた。

現職に就いてまだ1年足らず。本誌の取材に応じた彼は、「ナイスガイ」への回帰という新しいデザイン哲学の計画を語った。

「フォルクスワーゲンは “愛” のあるブランドであり、信頼できる設計、強力なアイデンティティ、真正性を持っています。『安定感』、『好感』、そして人々の期待以上のものを提供し、ユーモアのセンスがあるという『秘伝のタレ』、この3つの柱に基づいて構築されているのです」

「グローバル」はもう古い?

――ID.2allは非常に欧州的なクルマです。グローバルデザインという概念はもう古いのでしょうか?

「グローバルデザインは複雑で不要なものになりました。現在のIDラインナップはグローバルなデザイン感覚を持っていますが、これから変わっていきます。現在、独自のポートフォリオを持つ地域が7つあります。欧州、南米、北米、中国の第一汽車(FAW)、中国の上海汽車(SAIC)、中国に設立予定の新しいデザインセンター、そして中国向けのサブブランドのジェッタです」

フォルクスワーゲンのデザイン責任者、アンドレアス・ミント氏
フォルクスワーゲンのデザイン責任者、アンドレアス・ミント氏

「一口に中国と言っても、テイストが違えば交通事情も人々の様子も違う。まるでフィンランドとポルトガルを行き来するようなものです。フォルクスワーゲンは世界中で同じ価値観を持っていますが、デザイン要素は異なります」

――ID.3ID.4、ID.5はグローバルモデルとして作られたのですか?

「おそらく、そうだと思います。考え方は年々変わってきている。中国は毎年変わるし、行くたびに目にするものが信じられなくなります。コビッドの後では特にそうです」

「飛行機でドイツに戻ると、まるで中世の国のように感じますよ! アプローチを変えなければなりません」

――ID.2は中国にも導入されますか?

「計画はありません。(室内のタッチスクリーンの下にある)物理ボタンは、中国では何の関連性もありません(欧州では物理ボタンが求められるため)」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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