ロータス・エキシージSロードスター
公開 : 2014.11.01 14:17 更新 : 2017.05.29 19:24
試乗は幌を外した状態で行った。車体剛性とは微妙なもので、幌骨くらいでも剛性感から操舵感まで変ってしまうから、ロードスターを名乗るクルマの試乗検分としちゃ当然である。さて、屋根を切除されてしまった車体は、やはり僅かだが明確に変形が診とれる。操舵を入れた瞬間にフロントがねじれて逃げる感触があるのだ。リヤも含めて左右の差重移動に対してボディが正確に反応してくれない感じ。影響を受けて当たり前のコラム剛性も少し足りなく思える。ただし車体の変形が、挙動の位相遅れに繋がっている気配はない。このあたりの辻褄の合わせかたは流石に見事なものだ。ハードコアな蓮愛好家は屋根つきを買うだろうから、少しソフトコア寄りのこっちはこれで合格点を与えていいと思う。
雨は止んでも路面は濡れたままだったから操縦性のクリティカルな領域について触れるのは辞めておくが、素晴らしいとは言えない質量配分に対してロータスがどういう手当てをしたのかは分かった。輸入元に拠ればロードスターのアシは前のキャンバーを僅かに立てて、後ろのスタビをやや硬めているとのこと。リヤのロール剛性を上げたのは、旋回過渡で車体が捻じれて等価的にリヤのロール剛性が下がることに対する手当だろう。そして変形が止まったときにロール剛性アップが効いてオーバーステアに転じるのを恐れて、前輪を立てて横方向ゲインを下げた。そんなところだろう。昔、タルガトップと屋根つき両方のミドを乗り継いだとき、足のセッティングで逆のことをやったから狙いはよく分かる。
そんなシャシーは進入時にブレーキを思い切り残しても制動配分は前寄りなのでブレーキングドリフトには持ち込めそうもない。ただし電制LSDを加減する運転モード(甘口/中辛/辛口/フルカット)をあれこれ試すと機動は明らかに違った。甘口ではアクセルオフ時の差動制限が強めに掛かり、リヤは落ち着いたまま。ところが辛口にすると差動制限がかなり弛んでリヤは容易にスリップアングルをつけようとする。蓮愛好家が希求する鮮烈なターンインはこのモードで提供されるわけだ。そしてパワーオンでは逆に辛口なほど差動制限が強まって、リヤ左右輪のトルクが不等配分化され、蹴り足で回り込む機動が実現する。俯瞰的視点で見れば、このクルマはターンインのヨー起動は抑えめにして、LSDを使って回り込む運転のほうが合っていると思う。あとは状況と腕次第でモードを切り替えて加減してくれということなのだろう。老練というしかない仕上げかた。モデルの立ち位置に沿った巧い仕事でありました。
結論
小型簡素軽量からスーパーカー方面にニジリ寄っていった過去を繰り返すのかと思ったが……モデル単体の辻褄は合わせてあった。基本要素とセッティングを分けて考えられるひとならば。
(文・沢村慎太朗 写真・花村英典)
ロータス・エキシージSロードスター
価格 | 972.0万円 |
0-100km/h | 4.0秒 |
最高速度 | 233km/h |
燃費 | 9.9km/ℓ |
CO₂排出量 | 236g/km |
車両重量 | 1170kg |
エンジン形式 | V6DOHC機械過給, 3456cc |
エンジン配置 | ミド縦置き |
駆動方式 | 後輪駆動 |
最高出力 | 350ps/7000rpm |
最大最大トルク | 40.8kg-m/4500rpm |
馬力荷重比 | 299ps/t |
比出力 | 101ps/ℓ |
圧縮比 | 10.8:1 |
変速機 | 6段M/T |
全長 | 4070mm |
全幅 | 1800mm |
全高 | 1130mm |
ホイールベース | 2370mm |
燃料タンク容量 | 40ℓ |
荷室容量 | 98ℓ |