1980年代を予見:ランチア・デルタ 有能を再実感:アウディ100 ファミリーカーへ新風:プジョー405 欧州COTYの1番を選ぶ(4)

公開 : 2024.02.17 17:45

欧州カー・オブ・ザ・イヤーが始まってから2024年で60年 これまでの受賞車で、ベスト・オブ・ベストはどれか? 英国編集部が1960年代からイッキ乗り

1980年代 ランチア・デルタアウディ100/プジョー405

フロントエンジン・フロントドライブ(FF)の技術的進化が目覚ましかった、1980年代の量産車。1980年から1989年の欧州カー・オブ・ザ・イヤー、欧州COTYのトップ3に選ばれた合計30台のうち、22台がFFだったことにも、その事実は表れている。

ハッチバック・モデルの台頭も、大きな特徴だった。同じ30台では、20台にテールゲートが備わっていた。

歴代の欧州カー・オブ・ザ・イヤー受賞モデル 1980年代の3台
歴代の欧州カー・オブ・ザ・イヤー受賞モデル 1980年代の3台

その傾向は、コンパクトカーに限らなかった。1985年に2位となったルノー25や、1986年に優勝したフォード・スコーピオといった大きなモデルにも、テールゲートが与えられていた。

1980年の欧州COTYを受賞したランチア・デルタは、その傾向を予見させたといえる。ジョルジェット・ジウジアーロ氏のスタイリングをまとったハッチバックボディが、前輪駆動のパワートレインを包んでいた。

発表は1979年のドイツ・フランクフルト・モーターショー。小さなプレミアムモデルとして開発されたが、進化版のHFインテグラーレはラリーで大活躍した。それに比べると、ベースモデルは少し存在感が薄いようではある。

ベータより小柄なサイズを支えたプラットフォームは、フィアット由来。前後とも、マクファーソン・ストラット式のサスペンションが採用されていた。エンジンも、フィアット譲りのオーバースクエアな4気筒。当初は75psの1.3Lか、85psの1.5Lを選択できた。

ツインチョークのウェーバー・キャブレターと、新開発の吸気マニフォールド、エグゾーストを組み合わせ、最高出力を向上。高めの価格を正当化する、性能が与えられた。

フィアット・リトモを最適化したモデル

オペル・アストラやプジョー505を抑えて、1980年の欧州COTYを勝ち取ったデルタは、広々とした車内空間と快適性、走行安定性などで審査員の好評価を集めた。そんな強みは、40年以上が経過しても変わらないようだ。

今回、この企画のためにデルタを持ち込んでくれたのは、グラハム・ワイアット氏。1985年に登場したHFターボで、最高出力は140psまで増強されている。

ランチア・デルタ(S1/1979〜1991年/英国仕様)
ランチア・デルタ(S1/1979〜1991年/英国仕様)

「速くて、少し扱いにくいですね」。審査員のレイ・ハットンは感想を漏らしつつ、英国クラシックカーのメッカ、ビスター・ヘリテイジのコースを楽しそうに運転する。

もう1人の審査員、マット・プライヤーもうれしそうだ。「ステアリングと敏捷性が素晴らしい。気に入りました」。過去に運転したデルタより、一体感が強いという。

「操縦性は素晴らしい。でも、グリップが驚くほど低いかも。サイズは完璧で、数が売れたフィアット・リトモを最適化したようなモデルといえます」。と、スティーブ・クロプリーもデルタの魅力を改めて噛み締める。

これの3年後に欧州COTYを受賞したのが、アウディ100だ。スタイリングは丸みを帯び、コンセプトカーのように未来感のあるボディを獲得。ルーフやウインドウ回りなど、ボディ面は平滑化され、空気抵抗を示すCd値は0.30と優秀といえた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

欧州COTYの1番を選ぶの前後関係

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