所有するならどれ? 歴代Eクラスを振り返る 「大衆」からも支持されるメルセデス・ベンツの高級車

公開 : 2024.02.09 11:05

先を見据えた大胆なチャレンジ 革新と失敗

第3世代W211(2002-2009)

先代W210との繋がりを感じさせるデザインだが、SBC(電子制御ブレーキ)や高張力鋼板の使用拡大など、最新の製造・安全技術を盛り込んだ新世代のEクラスである。ボディも大型化した。しかし、その先進性ゆえにトラブルにも見舞われ、SBC関連で大規模なリコールに発展。後に改善されたが、安全面におけるメルセデスの信頼性を揺るがす事態となった。

第4世代W212(2009-2016)

W211を踏襲しつつ、新しいデザイン要素を取り入れたW212は、空力性能がさらに向上したほか、快適装備や安全装備も充実。また、歴代初のハイブリッドも導入するなど革新性に揺るぎはない。しかし、4灯分割のヘッドライトは好評を得られず、ついに後期型で廃止されてしまった。新しさや大胆さを追求しても、必ずしもユーザーの心に響くわけではないということをこの数年で学んだのかもしれない。

メルセデス・ベンツEクラス(W212)
メルセデス・ベンツEクラス(W212)

手堅い進化 IT技術をフル活用したモダンな高級車

第5世代W213(2016-2023)

丸みを帯びた流線型のフォルムが与えられたW213は、カメラやセンサー類を多用する高度な運転支援システムにより、安全面と快適性で新しい一歩を踏み出した。PHEVの初導入や、オフロード志向の第3のモデル「オールテレーン」を設定するなど、ラインナップにも大きな動きが見られた。一見するとライバルに比べて保守的だが、中身でしっかり進化を感じさせるのはメルセデスの妙か。

第6世代W214(2023-)

待望の最新世代W214型Eクラスは1月12日に日本で初披露された。発売は2月を予定。内外装を一新し、パワートレインもすべて電動化。コネクテッド技術による機能性とエンタメ性の強化も見逃せない。さらに、車内の “自撮り” 用カメラを使えばオンライン・ミーティングや動画撮影も可能だという。しかし、本当にそのような使い方をする機会があるだろうか? ZoomやTikTokならスマホでいいのでは……と思わずにはいられないが、あくまで1つのギミックとして楽しめばいいのかもしれない。

メルセデス・ベンツEクラス(W214)
メルセデス・ベンツEクラス(W214)

「発展」の最先端を征く 世界に欠かせない1台

Eクラスの歴史は、メルセデス・ベンツにとって決して成功の連続ではなく、挑戦と失敗の繰り返しでもある。考えてみれば、Eクラスという存在そのものがすでに挑戦的なモデルと言えるだろう。

コンパクト・クラス、ミディアム・クラスとして登場したEクラスは、上位のSクラスより小さいモデル、言わば「大衆」を意識して作られたモデルだ。一部のユーザーにしか手が届かなかった高級なデザイン、性能、快適装備、安全装備を「大衆化」したという点で、大きな意味を持つ。

メルセデス・ベンツEクラス(W214)
メルセデス・ベンツEクラス(W214)

裕福ではない一般的な家庭で育った筆者としては、スリーポインテッドスターを輝かせるEクラスは憧れの対象であると同時に、長らく縁の薄いクルマという印象であった。しかし、Eクラスの設計哲学は多くのクルマに影響を与えたと言われている。

上流階級のみが味わっていた先進的な技術は、やがて時間の流れとともに大衆化し、より多くの人々がその恩恵を受けられるようになる(自動車の普及もそうである)。それが真の発展であり、Eクラスはまさにその先端に立っているのではないだろうか。

ミディアム・クラスもといEクラスは、今後もメルセデス・ベンツの中核として、また世界のプレミアムセダン/ステーションワゴンの指標として進化を続けていくに違いない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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