やっぱりエンジンが大好き? 有名司会者リチャード・ハモンド「今の仕事」を語る
公開 : 2024.02.03 18:05
この先3年は仕事でいっぱい?
『グランド・ツアー』の仲間たちと同様、ハモンドは軽口を叩きながら陽気に過ごしているが、それでもThe Smallest Cogの目的はクルマであり、エンターテインメントではないという印象を、かなり早い段階から受ける。
「番組は二の次。人のお金を預かるのだから、クルマに対しては真剣でないといけないし、仕事の質で判断されることになる。下の階(工房)の人たちは一流の技術者であって、役者ではないんだ」
ハモンドによれば、クラシックカー関連の仕事は工房に直接持ち込まれたり、ウェブサイトを経由したりしてやってくるという。
「今後3年間はここを埋め尽くすほどの仕事がある。だから、もっと大きくしなくちゃいけないと思う」
地元に残るか、という問いに対しては「もちろん」という前向きな答えが返ってくる。
「ウスターシャーは大好きだ。毎週月曜日の朝、誰もいなくならない程度にロンドンからも離れているしね」
内燃エンジンは何も傷つけていない
ハモンドは、クラシックカーだけでなく、すべてのクルマの良さを熱心に語る。その情熱を裏付けるかのように雄弁だ。
「人はシェルターとして家を必要とする。それ以外のものは、外に出て手に入れないといけない。それを助ける機械は重要な発明だった。だからクルマは止まることなく、変化していくだろう」
「僕らは未来を歓迎しなければいけない。物事は変わらざるを得ないだろうし、僕らを救うのはエンジニアリングだろう。一度作ったクルマを再利用したり、水素燃料電池や水素燃焼を採り入れたり、ハイブリッド車を成功させたり、電気自動車をたくさん作って売ったりと、いろいろな解決策を受け入れる必要がある。将来のクルマがすべてバッテリーEVになるには、世界にはリチウムが足りない」
ハモンドは持続可能な燃料に特別な関心を抱いており、そのコストや開発に関する知識が豊富だ。「内燃エンジンは決して何かを傷つけたわけではない」と言う。
「悪いのは燃料だ。もし燃料が持続可能かつ大規模に製造できるのであれば、世界14億台のクルマの大半を残せるし、僕のような連中が修理できる。1年前よりも良い兆候が見えてきている」
『トップ・ギア』出演の意外な経緯?
ハモンド、ジェレミー・クラークソン、ジェームズ・メイが過去5シリーズ6年にわたって制作してきた壮大な配信番組『グランド・ツアー』の終了を英タイムズ紙が報じたまさにその日に、我々は取材にやってきた。
新聞各紙は、最終シリーズの撮影はジンバブエで行われたとしているが、ハモンドは真剣な顔つきで首を横に振る。世間では、『グランド・ツアー』の後援者であるアマゾンが英BBCと共謀して、新たな『トップ・ギア』の配信を構想しているのではないか、という荒唐無稽な憶測もあるようだ。ハモンドは無言である。笑顔ですらない。
ハモンドは幼い頃からメディアに出演したかったという。テレビの前は、地元のラジオ局でジャーナリスト兼司会者として10年のキャリアを積んだ。「それで、テレビの自動車番組の編集者と知り合うために、ルノーUKの広報部に就職したんだ」
それがグラナダ・テレビジョンの男性向けライフスタイル系番組『Men and Motors』への準レギュラー的参加につながり、最終的には『トップ・ギア』のオーディションに行き着いた。
その過程で、英ツーリングカー選手権(BTCC)のスター選手、ジェイソン・プラトンにチャンネル4の新番組『Driven』のプレゼンターの座を奪われ、「とても腹が立った」ことを今でも覚えているそうだ。
「僕はすでにジャーナリストやテレビ司会者としての訓練を積んでいたので、動揺したよ。ジェット機の着陸を歯医者には頼まないだろう?」
ハモンドがチェルトナムに住んでいた2000年、世界は変わった。代理人から『トップ・ギア』への出演オファーの連絡がきたのだ。「彼女(代理人)は、僕には無理だろうけど、それでも制作チームに会いに行くべきだと言ったんだ」
「妻との間にちょうど子供が生まれるころだったから、僕はずっと愛用していたフィアット・バルケッタを4人乗りの、いつ爆発するかわからない古ぼけたポルシェ911 SCに乗り換えた。それに乗って、ジェレミー(・クラークソン)とTGプロデューサーのアンディ・ウィルマンに会いに行ったんだ。2人はそれを見て、僕が本物だと思った」
「ジェレミーと一緒に仕事をした後、帰る時間になってしまったので、そろそろ “ナム” に帰らなきゃと伝えた。ナムっていうのは、チェルトナムのことね。それを面白がられたんだ。実のところ、僕が仕事につけたのはそのおかげだって言われている」