ポルシェ911 詳細データテスト 良好な乗り心地 使い切れる適度なパフォーマンス 絶望的な遮音性

公開 : 2024.02.10 20:25  更新 : 2024.02.16 04:12

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

911の限定車は多すぎて、似通ったものも少なくないので、全部間違えずに見分けられるのはよほどの911好きくらいだろう。そんな中、見間違いようがないものを挙げるなら、このダカールが筆頭だ。カレラ4GTSをベースに、最低地上高は50mmアップし、黒いプラスティックのホイールアーチクラッディングや独自のカーボンFRPスポイラーが独自のスタイリングに寄与する。

サスペンションには油圧アクチュエーターが備わり、さらに30mmの車高アップが可能。合計191mmの地上高は、もっとSUV的なフェラーリプロサングエを上回る。それよりダカールに似た仕立てのランボルギーニウラカン・ステラートでも最大171mmだ。この地上高は、ラリーとオフロードの各走行モードを選ぶと自動的に最大値まで上がるが、ダッシュボードのとグルスイッチでの車高調整も可能だ。

カーボンのリアスポイラーや牽引フック、なにより高い地上高により、後ろからでも特別な911であることを主張する。
カーボンのリアスポイラーや牽引フック、なにより高い地上高により、後ろからでも特別な911であることを主張する。    JACK HARRISON

その最大地上高は、170km/hまではキープされる。無論、その速度をその車高で走るのはかなり度胸がいる話だが。

スプリングは当然ながら、一般的な911に比べてかなり長く、ポルシェがいうにはレートが「かなり低い」とのこと。数々の最新911より明らかにスポーティさが薄らいだセッティングだ。とはいえ、速さと実用性を追求した最新911譲りのアイテムも備わっている。セミアクティブダンパーやアクティブスタビライザー、後輪操舵は標準装備で、ブレーキベースのトルクベクタリングも用いられる。ただしそれらは、ガラスのようにスムースな路面のワインディングではなく、濡れた草地やぬかるんだ林道を想定したチューニングが施されている。

リアのエンジンカバーを開けても、上面のみしか姿を見せないエンジンは3.0Lツインターボの水平対向6気筒。GTS仕様のチューニングで、480ps/58.1kg-mを発生する。トランスミッションは8速DCTで、各ギアレシオとファイナル比は同じギアボックスを用いる他の911と共通だ。それでも、最高速度が240km/hにとどまるのは、ピレリのオールテレインタイヤの耐用速度を考慮した結果だ。

吸気系や冷却系は、オフロード向けに手を加えられた。アップレートしたエアフィルター、よりパワフルなファンモーターとオルタネーターはターボ用だ。エンジンマウントはGT3からの流用で、締結剛性を2倍に高め、底付きのリスクを防いでいる。

フロントで28mm、リアで15mm拡大したトレッド、数々のグレードアップしたハードウェアなどにより、カレラ4GTSよりかなり重そうなダカールだが、スペック表上ではその差10kgに収まっている。バッテリイヤガラスの軽量化、カーボンFRPのボンネットとリアスポイラーで軽量化を図ったことは確かだ。そうそう、リアシートも排除した2座仕様であることを、危うくお伝えし忘れるところだった。

記事に関わった人々

  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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