ポルシェ911 詳細データテスト 良好な乗り心地 使い切れる適度なパフォーマンス 絶望的な遮音性

公開 : 2024.02.10 20:25  更新 : 2024.02.16 04:12

走り ★★★★★★★★★☆

トップスピードに関しては、このダカールより低いものを探すと、41年前の1983年、3.0LのSCまで遡らなければならない。しかし加速性能は違う。凍てつくような寒い日のテストで、路面は湿ってオールテレインタイヤのポテンシャルを出しきれない状況だったが、それでもローンチコントロール機能により、0−97km/hは3.3秒、0-161km/hは7.6秒をマークした。これはもっといいコンディションで2019年にテストしたカレラSや、日産が英国での販売を終了したばかりのR35型GT−Rを凌ぐ数字だ。

超高性能のサマータイヤを履かせて、もっと温暖な環境でテストすれば、0-97km/hは3秒フラットも夢ではない、という仮定も成り立つ。現代のパフォーマンスの基準で言えば、スーパーカーと呼べるかどうかの境目となる数字だ。冗談みたいなルックスに騙されてはいけない。これは正真正銘、速い911だ。

オフローダーのなりをしているが、パフォーマンスはベースとなったカレラ4GTSと同等。やや見劣りする部分は、オフロード向けチョイスのタイヤとブレーキが主な理由だ。
オフローダーのなりをしているが、パフォーマンスはベースとなったカレラ4GTSと同等。やや見劣りする部分は、オフロード向けチョイスのタイヤとブレーキが主な理由だ。    JACK HARRISON

気楽にモータースポーツを楽しみたいユーザーや、オフロードで遊びたいユーザーには、悪路向けのラリーローンチコントロールが専用設定されている。これは、ホイールスピンを20%まで許容するセッティングとなっている。

性格的には、ベースであるカレラ4GTSにきわめて近い。ダカールのほうが、初期加速ではややリアの沈み込みが大きく、ハードブレーキではダイブする。しかし、どちらもオフロード用の足回りにリセッティングしたクルマに想像するほどではない

8速DCTの素早い変速は、相変わらずおみごと。ツインターボユニットの実効性は、ブーストとシャシーが噛み合って、回転域の低いところから力強い加速を生み、驚くほどソウルフルなトップエンドの絶叫で完結する。これは、ダカールとのマッチングはバッチリのエンジンだと言える。パワーもトルクも有効バンドが広く、オフロードで効力を発揮する。車両姿勢のアジャストは思いのままだ。

もうひとつ触れておきたいのは、ポルシェといえばのブレーキ性能だ。もしも乾燥路面のストレートでテストしていたなら、オールテレインタイヤはネックになっていたはずだ。113−0km/hは45.1mで、カレラSの39.8mや、夏に計測したターボSの38.3mには及ばない。

公道上でも、ダカールのブレーキ性能には限界を感じた。そして、うっかりそれを失念することはないだろう。というのも、ペダルの初期レスポンスがややフワッとしているからだ。ディスクは専用の鋳鉄で、これは既存のカーボンセラミックが標準ホイールの内側に収まらなかったのが理由だという。

記事に関わった人々

  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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