相次ぐ不正に揺れるトヨタグループ 集合体の根本的原因はどこに? 認証不正と企業連合
公開 : 2024.02.02 17:45 更新 : 2024.02.02 17:52
トヨタグループの特殊性
こうした、一般の自動車ユーザーにとって馴染みがある、またはない企業が集結していることがトヨタグループの特殊性であり、それが一連の認証不正が起こった背景にあるように、筆者は思う。
例えば、豊田自動織機が「ランドクルーザー」/「ランドクルーザー・プラド」/「ハイエース」/「ハイラックス」などで搭載しているディーゼルエンジンの開発について、トヨタ自動車が同社に対して図面等の譲渡契約を結んでいることを、多くのユーザーは認識していないだろう。設計図面の所有権と知的財産権は豊田自動織機に帰属している。
また、ダイハツ工業が軽自動車やコンパクトカーの製造販売を行っていることは世間で広く知られているが、ユーザーの中には「ライズ」と「ロッキー」など、いわゆる兄弟車における開発の主体がダイハツ工業側にあるという認識がないかもしれない。
そもそも、OEM供給(オリジナル・エクイップメント・マニュファクチャー)というビジネスモデルに対する認識がなく、ダイハツ工業の工場停止が、トヨタブランド/スバルブランド/マツダブランドのモデルまで影響することに驚いた人もいるかもしれない。
要するに、トヨタグループは、トヨタ自動車と部品メーカーなどの周辺企業の集まりではなく、自動車メーカーの集合体なのだ。
海外の自動車業界はどうなのか?
グローバルで自動車産業界を見渡すと、ドイツのフォルクスワーゲングループがトヨタに近い形かもしれない。フォルクスワーゲン/アウディ/ポルシェ/ランボルギーニ/ベントレー/セアト/シュコダなど多国籍な企業が並ぶ。
ただし、いわゆるM&A(企業の合併買収)という資本の論理で形成されたという印象が強く、トヨタグループ各社のような密接な関係性とは違う企業連合に思える。
また、ステランティスの場合、FCAとPSAが連携したことで多様なブランドを持つが、企業体としては日本における商社のようなイメージがある。
トヨタグループは、密接な関係のある自動車メーカーの集合体が母体であるがゆえに、特に日野自動車、ダイハツ工業、さらにフォークリフトの世界シェアNo1の豊田自動織機など、自社ブランドを持つことでの企業のプライドと、トヨタ自動車からの受託事業に対するトヨタ自動車への配慮という、2つが併存している。
その併存の中で、各社の働き方の一部がバランスを崩した。または、時代の変化に追いついていない。だから、不正という最悪の事態を招いたのではないだろうか。
「ビジョン」と「心構え」を持って、トヨタグループがこれからどう変わっていくのか、世界が注目している。