なぜ? F1王者ルイス・ハミルトン 衝撃のフェラーリ移籍が意味するもの

公開 : 2024.02.04 18:05

チームとの関係 なぜフェラーリ

10年以上にわたるメルセデスとの関係に背を向けることについてはどうだろう?

2007年にマクラーレンに移籍して以来、ハミルトンは常にメルセデスを駆ってきた。生涯ブランド・アンバサダーになれるかもしれない。しかし、彼はそんな関係を必要としていない。

ルイス・ハミルトン
ルイス・ハミルトン

いつかハンドルを握れなくなったときに、実りある生活手段を見つけられるかどうかは心配することではない。彼はファン・マヌエル・ファンジオやスターリング・モスがいた世界とは別の世界に生きている。

彼をフェラーリに引き寄せたのは間違いなく、チーム代表として2年目を迎えるフレデリック・バスールである。2人の関係は古く、バスールは20数年前、F3とGP2時代のハミルトンの所属チームを率いていた。

そして、バスールはフェラーリを不振の時代から脱出させるべく、力強いスタートを切った。まだ道半ばだが、昨年は以前のようなオペレーション上のミスは減った。求心力のある存在だ。

しかし、フェラーリ側からすると、29歳の優秀なサインツよりも39歳のハミルトンを欲しがるのはなぜだろう? それは、ハミルトンがシーズンを通してこれまで以上に良い走りを見せ、トップに返り咲きたいというハングリー精神を証明したからである。マシンを与えれば、彼は必ず結果を出すだろう。

フェラーリは来年、ルクレールとの組み合わせでグリッド上に強力な布陣を敷くことになりそうだ。ハミルトンの存在はチームに活気を与え、さらにモチベーションを高めるだろう。また、バスールが切望している新しい技術責任者の採用の助けにもなるかもしれない。

では、今季はどうだろうか? ハミルトンは昨年8月にメルセデスと2年間の契約延長にサインしたばかりだが、そこには何らかの中断オプションがついていたようだ。今のところ、彼はメルセデスのドライバーのままだ。さぞ気まずいことだろう。

レーシングドライバーの忠誠心

このようなシナリオは以前にも見たことがある。アロンソは2006年シーズンを前にマクラーレンのドライバーとして発表されたが、ルノーとの契約を見送って陣営を変更したのだ。しかし、今回はどのような力学が働くかはまだわからない。

ハミルトンがサバティカル(長期休暇)に入り、即座にシートから降りれば、メルセデスF1チームにとって大きな混乱は避けられるだろう。しかし、この情勢でトト・ヴォルフが7冠の後任としていったい誰と契約できるというのか?

ルイス・ハミルトン
ルイス・ハミルトン

疑問は尽きない。ルクレールはどう反応するだろう? もし今季にメルセデスがフェラーリを圧倒したら? フェラーリのギャンブルが裏目に出て、ハミルトンが再びモチベーションを下げてしまったら? 彼に気力と意欲はあるのだろうか?

フェルスタッペンとレッドブルの終わらないロマンスが懸念される中、「ハミルトンがフェラーリに亡命」というストーリーは、F1に大いに必要とされていた “アドレナリン” となるだろう。メロドラマは続く。

最後に、レーシングドライバーを単なる従業員だと考えてはいけないということが、改めて証明された。ハミルトンのキャリアはメルセデスのおかげだと言う人もいるかもしれないが、実際のところ、恵まれているのはメルセデスだ。いずれにせよ、忠誠心というのは厄介なものである。

レーシングドライバーは、契約上はそうでなくても、精神的には常にフリーランスだ。彼らは常に勝つチャンスを得るために最善の選択肢を探し求め、それが古い友情や同盟関係を壊すことになっても受け入れる。

アイルトン・セナ、アラン・プロスト、ミハエル・シューマッハ、アロンソ、そして1950年代のファンジオでさえもそうだった。それが弱肉強食のF1の掟なのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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