クルマ屋の造ったEVとニューカマーの創ったEV ベンチマークを比較試乗 VW ID.4/テスラ・モデルY
公開 : 2024.02.07 17:45
圧倒的な走りの違い
走り出してすぐに感じたのは、雑味がなくなったことだ。
クルマの乗り心地とハンドリングの指標である、NVH(ノイズ「音」/バイブレーション「振動」/ハーシュネス「路面からの突き上げ」)において高性能であると感じる。尚今回の試乗ではスタッドレスタイヤを装着していて、これだけの高評価であることを付け加えておく。
NVH性能が上がったことで、モデルYの設計思想がしっかりとドライバーに伝わってくるようになった。
具体的には、ハンドルが旋回するためのスイッチであり、旋回はモーターが司るといった感じで動く。加速モードを「コンフォート」から「標準」に変えて有料道路の合流で加速すると、相変わらず「かなり速い」と感じる。
ステアリングモードを「コンフォート」/「標準」/「スポーツ」と順に使い分けると、旋回するためのスイッチとしての存在感が増していく。
回生ブレーキ力も強く、コーナーが続く状況だと、クルマの「張りの強さ」を痛感する。こうした走行感を持つクルマが、今や世界売上第一位となった時代。
これがEVに限らず、クルマのベンチマークとなったわけだから、従来の自動車メーカーとしては、新車開発に対してかなり頭を切り替えてクルマと接する必要があると思う。
クルマ屋が造ったEVベンチマーク
モデルYの走行感をベンチマークとして、ID.4に乗ると「従来のクルマがEVに進化した」といった印象を持つ。
そうはいっても、ID.4はEV専用プラットフォームによって開発されたものである。市場には、従来の内燃機関車をEV化したモデルも多数存在している。
その上で、ID.4のインテリアの発想、そしてクルマの挙動は確かにEVなのだが、モデルYとは設計思想が全く違うと感じる。言うなれば「クルマ屋が作るEV」という印象だ。サスペンションがしっかり動いて、そこにモーターがアシストして旋回していく。モデルYとは動きの質感が明らかに違う。
長きに渡って熟成させたフォルクスワーゲンのクルマ作りをEVに活かしているのがよく分かる。これまでフォルクスワーゲンは「ゴルフ」を筆頭に、グローバルカーのベンチマークと位置付けられてきた。その立ち位置をEVではID.シリーズが担う。
このように、ひとことで最新型EVといっても、モデルYとID.4では開発思想が違い、その違いをユーザーはダイレクトに実感できる。ユーザーがどちらを選ぶかは、それぞれのユーザーのクルマに対する考え方や捉え方によって違いが出てくると感じた今回の比較試乗であった。