トヨタ・エスクァイア

公開 : 2014.11.25 23:50  更新 : 2022.12.12 21:30

■どんな感じ?

こういうクルマが地球上に存在していることを、ロールズのエンジニアがもし知っていたら、かれらはみずからの仕事を恥じ入るかもしれない。およそ60㎞/hまでの走行において、これほど静かで乗り心地のよい、しかもこれほど居住空間の広々とした、全幅1.7m以下の乗り物はこの極東の島国にしかないといってよいであろう。

松蔭の頃の人であれば、夷狄(いてき)と呼んだ西洋人と異なり、この国の人々は西洋式の走り方というものを知らなかった。そういう国の人々がそういう国の人々向けにつくるクルマが、60㎞/h以上、速度を増すほどに苦手とするのも無理からぬことかもしれぬ。ふにゃふにゃなんである。ステアリング・フィールもブレーキもヘタレで、およそ飛ばすということを前提としていない。

不思議とロールが小さいのは、このクルマのフロントのシートの下に重いニッケル水素バッテリーが隠されているためであるにちがいない。といって、車重はハイブリッドと2ℓガソリンで20㎏しか違わないのだから、物理の不思議というほかない。あるいは、筆者の感覚の不思議というべきか。

2ℓガソリンは、320万4000円のハイブリッドより40万円ほどお求めやすい。より自動車らしいのは2ℓガソリンだけれど、もしロールズもかくやの静かさと低速での乗り心地を重視するのであれば、ハイブリッドを選ぶべきであろう。5ナンバー3列シートのミニバンを選んだ時点で、あなたはすでに自分のエゴというものを捨てている。この際、私心というものを一切捨てるべきであろう。

記事に関わった人々

  • 今尾直樹

    Naoki Imao

    1960年岐阜県生まれ。幼少時、ウチにあったダイハツ・ミゼットのキャビンの真ん中、エンジンの上に跨って乗るのが好きだった。通った小学校の校長室には織田信長の肖像画が飾ってあった。信長はカッコいいと思った。小学5年生の秋の社会見学でトヨタの工場に行って、トヨタ車がいっぱい載っている下敷きをもらってうれしかった。工場のなかはガッチャンガッチャン、騒音と金属の匂いに満ちていて、自動車絶望工場だとは思わなかったけれど、たいへんだなぁ、とは思った。

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