V6からV8搭載へ ポルシェ・カイエンSクーペ SUVなのにどこか空冷ポルシェを想起させる?

公開 : 2024.02.08 17:45

マイナーチェンジしたポルシェ・カイエンSクーペに試乗しました。V6を置き換えV8を搭載したS、もはやフルモデルチェンジでは? と思わせるような更に高まった万能感を味わいます。しかし何故か空冷を思い出す一幕も。

少し角ばって、少しデジタルになった新型 

3代目となるポルシェカイエンのマイナーチェンジ版が上陸を果たした。

例によってベースモデルのカイエンにはじまり、俊足のカイエンS、そしてカイエン・ターボEハイブリッド等のラインナップがずらりと顔を揃えている。もちろん標準ボディに加えクーペも選ぶことができる。今回試乗したモデルはカイエンSのクーペだった。

ポルシェ・カイエンSクーペ
ポルシェ・カイエンSクーペ

現行カイエンのラインナップとしてはベーシックな部類なのかもしれないが、今回のカイエンSクーペは話題性のあるモデルだ。パワーユニットが以前のV6からポルシェ開発による4L V8ツインターボ、最高出力474ps版に変更されているのである。

新型カイエンのブラッシュアップは中身だけに留まらない。一目でわかるのはフロントマスクの変化だろう。最もわかりやすいのはヘッドランプの変更で、より角ばったかたちになりタイカンを思わせる表情になっていた。それに合わせフロントバンパーも少し角ばった他、ボンネットやフェンダーアーチの形状にも手が加えられている。

室内も外観と同じくらい手が加えられている。ダッシュパネルが室内幅いっぱいのワイドな平面タイプになり、スクエアな外観との整合性を高めている。また平面はフルデジタルコクピットのパネルを収めやすくする効果もある。スイッチ類もパネル内に収納され、すっきりとしつつ高級感が高まっていた。

今回のマイチェンは手が込んだものになっているが、それこそポルシェがカイエンに対して抱く期待の大きさを表していると思う。

その質感、想像するのは空冷のあのクルマ

ボディは大きく背も高いが、運転席への乗降性は悪くない。ホールド性の高いシートに腰掛けると目の前にはカイエンというよりポルシェの世界観が広がっている。

今回はいよいよ、左手を伸ばした先にシフトレバーがない。シフトはメインモニター脇に移設され、そのサイズも911のPDKに似た小さなツマミ程度になってしまったのだが、そんな操作系だけでも「新型!」という雰囲気は伝わってくる。

ポルシェ・カイエンSクーペ
ポルシェ・カイエンSクーペ

ポルシェはボディの鉄からアルミへの材料置換でもそうなのだけれど、急にはやらないけれど機会があるたびに着実に推し進めてくる感じ。コクピットのデジタル化もかなりのところまで来ている。

走り出してからしばらく経って「なんだか993みたいだな」と思いはじめた。つまりボディ全体が引き締まって感じられ、アイポイントは思いのほか低く、そして車体の中心に金属の塊から削り出したような硬さ、重量感を感じる。この最後の塊感のところが水冷ではなく空冷時代の感覚なのだけれど、驚いたことに今回のカイエンSにはそれがあった。

しかもかなり速い! 直進時はもちろんステアリングが少し切れていても、スロットルを踏み込めば、ロールがユラッと来る前に車体がぐんぐんと前に出ていく。その少々強引なくらいのスピード感覚は、少し前に試乗したカイエン・ターボGTによく似ていた。

あちらはニュル最速タイムを叩き出したカイエンのGT3RSのようなモデル。でも今回のカイエンSクーペにもそれと似た印象、スピード感が備わっていて驚かされた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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