一生懸命を望む:フィアット・パンダ 最も未来を予兆:トヨタ・プリウス ブランド初EV:ジャガーIペイス 欧州COTYの1番を選ぶ(6)

公開 : 2024.02.18 17:45

最も未来を予兆した1台だった

その走りを支えていたのが、内燃エンジンと電気モーター、駆動用バッテリーを組み合わせた、トヨタ独自のハイブリッド・パワートレイン。当時は、ハイブリッド・シナジー・ドライブ(HSD)という名称が前面に打ち出されていた。

燃費優先で調整された77psの1.5Lガソリンエンジンを、電気モーターがアシスト。高出力・軽量化された駆動用バッテリーと組み合わされ、カタログ値で23.3km/Lの燃費を達成しつつ、0-97km/h加速10.9秒の称えるべき動力性能を備えていた。

トヨタ・プリウス(2代目/2003〜2009年/英国仕様)
トヨタ・プリウス(2代目/2003〜2009年/英国仕様)

今回の審査へ挑んだグリーン・シルバーのプリウスは、レイ本人の愛車。16年間も大切に乗っているそうだ。「信頼性が高く、リラックスして運転できることを、これまで実感してきました」。と自身の経験を話す。

また彼は、歴代の欧州COTYの受賞車で、最も未来を予兆した1台だったとも信じている。これには、残り2名の審査員も賛同するようだ。

「先進的な技術を、簡単で身近なものにしました。多くの支持を集める、定番的なモデルになりましたね。新しい5代目も、遅れて英国に導入されるようですし」。マットが、これまでの20年を振り返る。

スティーブは、パワートレインの複雑さに、当初は馴染めなかった人も多かったと話す。「プリウスの経済性や洗練性の驚異的な水準には、あまり目が向けられませんでした。メカニズムが、変なものだと考えられていたからでしょう」

「しかし、運転しやすく快適。耐久性も間違いないようですね。これほど多くのプリウスが、今でも英国の道を走っているのですから」

ブランド初の電動クロスオーバー

そんなトヨタ車のように、20年後のジャガーIペイスのことも、われわれは振り返ることができるだろうか。6年前に発売されて以降、バッテリーEVの技術は急速に進化し、選択肢が拡大した。筆者は、少し難しいように感じている。

だが2019年には、革新的な技術や充分な航続距離、急速充電能力、動的能力などへ、多くの審査員が感銘を受けたことは間違いない。素晴らしいスポーツカーアルピーヌA110を僅差で抑えて、欧州COTYへ選出されたのだから。

ジャガーIペイス(2018年〜/英国仕様)
ジャガーIペイス(2018年〜/英国仕様)

前後アクスルに駆動用モーターを搭載し、ツインモーターでの最高出力は399ps。最大トルクは70.6kg-mと太かった。

0-97km/h加速を4.5秒でこなす鋭いダッシュ力を秘め、最高速度は199km/h。車重2133kgの5シーター・クロスオーバーとして、不足はなかった。

ところが近年は、ジャガーのバッテリーEV戦略は少し停滞しているように見える。軽量な後輪駆動のIペイスや、派生モデルの提供は始まっていない。ブランド初の電動クロスオーバーは、進化を止めたようだ。

スティーブが、冷静に鋭くコメントする。「とても良く開発されたクルマだと思います。同時に、高い価格を正当化させるため、過剰な技術を搭載することへ迫られていたことも表しています。250馬力の後輪駆動版では、成り立たないのかもしれません」

「それでも、見た目は今でも素晴らしい。動的にも高く評価できます」

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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