60年間のベスト・オブ・ベストは? プリウス/フォーカス/128/100/Ro80 欧州COTYの1番を選ぶ(7)

公開 : 2024.02.18 17:46

欧州カー・オブ・ザ・イヤーが始まってから2024年で60年 これまでの受賞車で、ベスト・オブ・ベストはどれか? 英国編集部が1960年代からイッキ乗り

カテゴリーへ確かな変化を与えてきた5台

60年という節目を迎えた欧州カー・オブ・ザ・イヤー、欧州COTYを振り返り、これまで3名の審査員で年代毎の代表モデルを選出してきた。改めて、勝ち残った5台を振り返ってみよう。

1960年代はNSU Ro80、1970年代はフィアット128、1980年代はアウディ100が、それぞれの代表へ選ばれた。そして、1990年代はフォード・フォーカス、2000年代以降はトヨタプリウスという結果になった。

歴代の欧州カー・オブ・ザ・イヤー受賞モデル 英国編集部が選んだトップ5台
歴代の欧州カー・オブ・ザ・イヤー受賞モデル 英国編集部が選んだトップ5台

いずれのメーカーも、従来の領域を拡大しようという野心がなければ、現在まで事業を続けることは難しかったかもしれない。自動車産業自体も、ここまで成熟することはなかっただろう。

15台を再確認したことで、過去の欧州COTYの栄誉が、必ずしも最も優れたモデルへ与えられたわけではなかったことも見えてきた。それでも、受賞モデルに対する認識を底上げし、カテゴリーへ確かな変化を与えてきたことは明らかだ。

受賞当時、最も新鮮なベンチマーク的仕上がりにあったのは、5台で1番古いNSU Ro80だろう。3名の審査員も、その現代性に驚かされていた。

ウェッジシェイプのスタイリングだけでなく、快適な乗り心地や巧みな操縦性、確かなブレーキは、1960年代の該当クラスを間違いなくリードしていた。しかし、弱点もはらむロータリーエンジンが影響し、今回は最終的な評価を高めることはできなかった。

FFレイアウトの雛形を作ったフィアット128

アウディ100は、1960年代にフォルクスワーゲン傘下に収まりながらも、前衛的なスタイリングや先進的な設計で高い評価を集めた。滑らかな面処理と秀でた空力特性は、その後の大型サルーンへ大きな影響をもたらした。エンジンの小型化にも貢献した。

安全に対する取り組みも、アウディの強みといえた。だが、ドライバーズカーというわけではなかった。卓越したエンジニアリングとデザインで、称賛されるサルーンだろう。

フィアット128(1969〜1985年/英国仕様)
フィアット128(1969〜1985年/英国仕様)

2000年代以降の勝者、2代目トヨタ・プリウスは、電動化技術を民主化した最初の量産車として、審査員から評価を集めた。とはいえ、これもドライビング体験を牽引したモデルとはいえない。

動力性能に不満はなく、パッケージングは優秀。21世紀に発売されたモデルとして、最も重要な1台に据えられることは間違いない。だとしても、35年も古いフィアット128の楽しさを超えることは難しい。

3名の審査員は、小さなフィアットを運転し、軽快で正確な操縦性、血気盛んなオーバーヘッドカム・エンジン、広々とした車内に改めて驚くこととなった。運転した誰もが、笑顔になるクルマといえた。

確かに、ハイブリッドのような高度な技術は搭載していない。しかし、現代のフロントエンジン・フロントドライブの雛形といえる、レイアウトを実現した最初の量産車として、歴史に刻まれるべき1台だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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