フォルクスワーゲン・ポロ ブルーGT
公開 : 2014.11.25 18:52 更新 : 2017.05.29 18:57
以上は運転者の情緒の内側で起きる棘だが、シャシーに関しては物理的な瑕疵が表出していた。察するにブルーGTのブッシュ容量は大きめで、GTIのそれよりは基準車のほうに近いと診た。またダンパーも初期ストローク領域のところで減衰力を抜いていて、上屋の揺動は許す代わりに、小さな路面不整はアシを小さく動かしてこれを逃がす感じに仕立てられている。15mmローダウンサスだと言うがダンパーのほうは弛めで、効き始めるまでのクリアランスが指1本分もなくなってしまったバンプストッパーが妙に頑張って仕事をするので、するりとアシが動いたら、その直後に動きが急に停まって揺すられる感じになる。つまり、上屋揺動の幅は規制したい気持ちはありつつも、といって引き締める方に割り切っておらず、乗り心地の安穏を意識した設定である。こういうアシに対して、このクルマはダンロップSPスポーツ・マックスの215/40R17という立派なタイヤを履く(現地仕様も同サイズ)。これが典型的なアンバランスだ。操舵時に前輪のコーナリングパワーは威勢よく発生するのだが、アシの位置決め剛性やフロア剛性に対して元気がありすぎる。おまけにEPSとの整合も不十分で、切った先でどうにも舵が落ち着かない。また先述のようなバンプストッパーの設定とダンパー減衰の組み合わせだから、前アシの踏ん張りが頼りなく泳いでしまいがちで折角のタイヤのグリップ能力を上手に使えていない。初期の軽薄な動きと、その先の規制感の境目に明確な乗り越え感があって、ロールでも制動時でも事がリニアに運ばない。定常旋回に入れば、最初はVWらしく頑固に踏ん張っていた後輪に少しずつスリップアングルが付きだして、旋回は滞りなく進行してくれるのだが、その前後の過渡域のところで動きが千々に乱れるので困ってしまう。クルマの挙動が情緒不安定風にいつでも神経質なのである。にもかかわらず、路面舗装の肌理が粗いところでは、微振動と、それに呼応する騒音がフロアからステアリングにまで襲ってきて、だから音振環境は芳しくない。
VWのことだからそこに明白な破綻はない。だが、これは心穏やかに乗っていられないクルマである。VW車からそれを引き算したら何が残るのか──。昔のひとは正しかった。ドイツにはそういう故事や諺はないのだろうか。
結論
フルチェンジなのだそうだが他のグレードは大丈夫なのだろうか。ともあれVWの失敗を他山の石として、こちらも二兎を追わずに腹を括って絞るべきなのだろう。すなわち1.2ℓの105psかGTIかの二択だ。
(文・沢村慎太朗 写真・花村英典)
フォルクスワーゲン・ポロ ブルーGT
価格 | 283.5万円 |
0-100km/h | 7.8秒 |
最高速度 | 220km/h |
燃費 | 21.3km/ℓ |
CO₂排出量 | 108g/km |
車両重量 | 1200kg |
エンジン形式 | 直4DOHCターボ, 1394cc |
エンジン配置 | フロント横置き |
駆動方式 | 前輪駆動 |
最高出力 | 150ps/5000-6000rpm |
最大トルク | 25.5kg-m/1500-3500rpm |
馬力荷重比 | 125ps/t |
比出力 | 108ps/ℓ |
圧縮比 | 10.0:1 |
変速機 | 7段DCT(DSG) |
全長 | 3995mm |
全幅 | 1685mm |
全高 | 1445mm |
ホイールベース | 2470mm |
燃料タンク容量 | 45ℓ |
荷室容量 | 280-952ℓ |
タイヤ | 215/40R17 |