スバル・フォレスター tS
公開 : 2014.11.25 19:56 更新 : 2017.05.29 18:42
STIが手がけたフォレスターのコンプリートカーtSは、走り、装備、そしてデザインとすべてにおいて標準モデルを超える存在として誕生。生産数はわずか300台である。
STIが手がけた最新のコンプリートカー、フォレスターtSが目指すは、ずばり“欧州車を超える走り”。このキーワードを具体的に紹介するのなら、いつどの瞬間、どんな道を走っていても運転する楽しさをドライバーに感じさせるもの、となろう。ドライバーの意図したように動き、リニアリティをもって操作に応えるクルマがSTIの目指すゴールである。
11月25日に発売されたフォレスターtSは、まさにそのテーマの具現化を目指したモデルだ。背の高いSUVは、ともすればファンなドライビングにビハインドをもたらすものだが、BMWのXシリーズしかり、アウディのQシリーズしかり、走りと実用性の両立を果たした欧州モデルは数多い。フォレスターはそこに殴り込みをかける格好なのだが、勿体ないことになぜか日本専売車種。各国の市場からも要望は多いと聞くものの、生産性や価格の問題で、現在は日本市場のみの販売に落ち着いている。
しかし、開発陣はいつグローバルマーケットに打って出ても良いように、開発の拠点を日本のみならずドイツにも置いた。日本専売車種にもかかわらず、である。ニュルブルクリンクでのテストはもちろん、アウトバーンでも徹底的に走り込んだという。とくに一部の路面が荒れたアウトバーンの南北を走る主要幹線道路のA5線で、他の欧州車に混じってかなりの距離を走り、熟成させた。こうした姿勢からも本格的なチューンドコンプリートカーを造ろうという意気込みが感じ取れる。そう、決して耳心地の悪い響きを持ったチューニングパーツを装着するだけのカスタマイズなどではないのである。
そのドイツでの開発で、tSは操舵に対する的確な車両応答性や高速安定性、危険回避性能、ピッチングの少ないフラットでしなやかな乗り心地、そして快適性能向上を図った。シャシー剛性の向上は基本中の基本だが、目標値を実現するためにSTIの開発陣は、15mmローダウンしたフロントに倒立式の専用サスペンションを与えるとともに、フレキシブルタワーバーやスティフナー、サポートサブフレームを追加。サブフレームやスタビライザーのブッシュも専用品とした。さらにクランプスティフナーの板厚も上げている。インテリアパーツなどは富士重工・矢島工場の量産ラインに載せ組み込みできるが、こうしたチューニング箇所は、専用ラインで特別にアッセンブリーされているのだという。
また、トランスミッションコントロールユニット(TCU)やエンジンコントロールユニット(ECU)もオリジナルチューンを施したtS専用パーツ。最高出力280ps、最大トルク35.7kgmは基準車(2.0XT系)から変更はないが、アクセルの低中開度の発生トルクを増やし加速感を向上させ、同時にリニアトロニック(CVT)のSIドライブのS#モードにおける8段ステップ変速をクロスレシオ化した。
この違いは誰にでも体感可能だ。とくにアクセルの踏み込みに対するトルクの出方がダイレクトに味わえるのは、STIの面目躍如といったところだろう。S#モード時のリニアトロニックは、まるで出来の良いDCTのような変速フィーリングをもたらすチューニングで、知らずに乗ったならこのトランスミッションをCVTだと言い当てるのは難しいほど。数値以上のダッシュ力も、もれなくついてくる。本当に標準車と同じパワーなのか? にわかに疑いたくなるこの感想は決して大げさではない。