事実上「まったく新しい」 ポルシェ・タイカン 改良版の試作車へ試乗(1) 679kmに952ps

公開 : 2024.02.16 19:05

エネルギーを吸い取るように電気が流れる

ギークは、改善を生むことを理由に、競争を歓迎していると口にする。とはいえ、タイカンで重要視されたのは、ユーザーの要望へ応えること。ライバルモデルを凌駕することには、さほど重きが置かれなかったそうだ。

世界中の道を約15万台のタイカンが走っており、実走行による膨大な知見を、ポルシェは集めることができる。これが、耐久性と充電能力の向上へ力が注がれた理由を作った。

ポルシェ・タイカン(フェイスリフト後のプロトタイプ/北米仕様)
ポルシェ・タイカン(フェイスリフト後のプロトタイプ/北米仕様)

リアの駆動用モーターは、今までより強力でありながら、軽量・高効率なものへ置換。駆動用バッテリーは容量が増やされた。回生ブレーキは、最大400kWの電気エネルギーを生成するようになった。急速充電能力は、270kWから320kWへ上昇した。

電動パワートレインの熱管理システムも、徹底的に見直された。気象条件で受ける影響を、小さく抑えるため。これらはいずれも、バッテリーEVのオーナーが共通して感じる不便へ応えたものといえる。

「当初は、航続距離と充電時間が最も大きい批判対象といえました。長距離移動は安全か? エネルギーが切れて故障することはないのか? 充電ステーションへのナビゲーション方法は? など、お客様は不安を感じていました」。とギークは説明する。

カリフォルニア州を数時間走行し、充電ケーブルを差し込む。ギークは、少し興奮した様子で「これを見てください」。と筆者へ声をかける。

ソケットを接続し、30秒後に達した流量は270kW。まるでポンプでエネルギーを吸い取るように、電気がバッテリーへ流れていく。

駆動用バッテリーが理想的な温度になるにつれ、充電量の数字が増えていく。306kW、311kW、316kWと、思わず声を出して読み上げてしまった。その日のピーク値は332kW。5分間ほど、300kW台が続いた。

この続きは、ポルシェ・タイカン 改良版の試作車へ試乗(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ポルシェ・タイカン 改良版の試作車へ試乗の前後関係

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