メルセデス・ベンツEクラス 詳細データテスト ディーゼルセダン健在の証明 快適性は改善の余地あり

公開 : 2024.02.17 20:25

走り ★★★★★★★★☆☆

大型の上級セダンに、2.0Lディーゼルのマイルドハイブリッドでは、その字面を見る限りもはや時代遅れのパワートレインだと思えるはずだ。英国BMWはそう考えたようで、520dや530dを導入しなかった。

ところが、E220dに乗ると、ほどなくそれを考え直す。EVやPHEVの税制優遇を考えなければ、この手のクルマとディーゼルの相性はバッチリだ。

おおらかなトルクを安定供給する上質なディーゼルは、バッテリー残量にパフォーマンスが左右されるPHEVやEVよりよほどサルーン向きのパワーユニットだ。
おおらかなトルクを安定供給する上質なディーゼルは、バッテリー残量にパフォーマンスが左右されるPHEVやEVよりよほどサルーン向きのパワーユニットだ。    JACK HARRISON

ディーゼルといっても、そう聞いて想像するようなガサツさや騒々しさは微塵もない。コールドスタートでも、街乗りでも、限界を試す性能テスト中であっても、このOM654Mユニットは静かに回り、エンジンルームがはるか遠くにあるように思わされる。

また、マイルドハイブリッドではアイドリングストップを切りにくいものもあるが、このクルマのスタート/ストップは楽にカットできる。とはいえ、その必要をめったに感じなかったのは、エンジンの停止と再始動がじつに早くスムースだったからだ。

実測1917kgという重量で、湿って凍てついたテストコースに入ったにもかかわらず、E220dはスタンディングスタートから7.2秒で97km/hに達した。これは2017年に計測した先代520dを0.2秒凌いでいる。EVやハイブリッドであればどうということのない数字だ。アウディA6 50 TFSIeは5.7秒をマークしている。しかし、その無理のない感じはみごとで、そこにこそ真の価値がある。

まず最初に、提供されるパフォーマンスが一定している。バッテリー残量に左右されるPHEVなどとは決定的に異なるところだ。エンジンと9速ATとの協調性も、ほぼすべての場合ですばらしい。多くのギアボックスにみられるような、エンジンに対する遅れで悩まされることもなく、豊かなトルクを生かすために行う1〜2段のシフトダウンもクイック。しかし、レッドラインまで回し切ってしまうことはない。

それでも、批判の的はギアボックスとなってしまう。ほぼほぼスムースなのだが、思いがけないところで油断を見せるのだ。交差点で減速したところから、信号が青になって急に再加速するような、さもなければ混み合ったジャンクションを急加速で抜けるような場面で、シフトダウンして接続するのに間が空いてしまうのだ。

シフトパドルはEクラス全車に標準装備されるが、マニュアルモードの選択方法ははっきりしない。ディスプレイのメニューを探らなければならないのだ。理想的な方法ではないが、メニューを見つけるのは難しくない。それに、ディーゼルのサルーンは、マニュアル変速を積極的に使いたい類のクルマではない。

ブレーキ性能に関しては、パフォーマンス志向のサマータイヤには、凍りそうな湿った路面でのテストが厳しかったというのが大きい。113km/hからの完全停止に56.2mというのは長かった。おもしろいのは、ESPをカットしてみたら4mほど伸びたことで、加速中だけでなく、減速中の車両安定にもこの電子制御が効いていることを証明できた。

電動化したメルセデスの大きな弱点となっているペダルフィールは、普段使いでは上々だが、緊急ブレーキではソフトな感じだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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