メルセデス・ベンツEクラス 詳細データテスト ディーゼルセダン健在の証明 快適性は改善の余地あり

公開 : 2024.02.17 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

メルセデス・ベンツの走りのキャラクターは、このところ一貫性がなかった。英国の主力モデルはスポーツサスペンションが標準装備され、バンピーな道では過敏に感じることもある。しかしそうではなく、高級車の乗り味をどう作るか知っていることを誇示するようなクルマもまたある。標準サスペンションのPHEV、エアサスペンションのEQEEQSなどはかなりのものだ。

残念ながら、英国メルセデスが心変わりしてエアサス仕様を導入しない限り、Eクラスのマイルドハイブリッドは前者に当てはまってしまう。PHEVには、もっとソフトな足回りを与えているのだが。

E220dの走りには、Eクラスらしからぬところがある。直感的なステアリングとしっかりしたボディコントロールを備える一方で、低速では乗り心地が硬いのだ。
E220dの走りには、Eクラスらしからぬところがある。直感的なステアリングとしっかりしたボディコントロールを備える一方で、低速では乗り心地が硬いのだ。    JACK HARRISON

そのためE220dは、荒れた路面ではやや乗り心地がゴツゴツした感じ。とくに、速度が60km/hに満たないようなときにはそうだ。だいぶ硬めの脚で、ダンピングのクオリティもメルセデスの褒められるほうには入らない。

ところが、速度が上がると、本領を発揮するかのように足取りがよくなり、大きなバンプもアイロンをかけるように呑み込んでいく。とはいえ、パッシブの周波数選択式ダンパーは奇妙なくらい一貫性のないフィールで、ときどきバンプを見逃したように働かないことがある。しかしながら、高速道路の長距離移動においてなら、このディーゼルのEクラスはそこを目指して仕立てたのだろうと納得の走りを味わえる。

それとは裏腹に、ハンドリングは驚くほど鋭い。硬いサスペンションはコーナーでボディの水平を保ち、Pゼロは強力なグリップを発揮する。ステアリングはとにかくエクセレントだ。かなりクイックで、ロックトウロック2.2回転だが、出来のいい可変レシオ機構のおかげで、ナーバスさはまったく感じさせない。コーナーでの手応えは、それほどハードに走らせなくても徐々に高まっていく。

この乗り心地とハンドリングの組み合わせが、大型サルーンにふさわしいかは賛否あると思う。車重は2t近く、全幅はミラーを含めれば2mを超えるのだ。ハンドリングはバランスよく満足できるものだが、決して心から楽しいと言えるタイプのものではなく、重量の存在を忘れられることもなかった。

メルセデスといえば、電子制御スタビリティコントロール採用の先駆けだが、テスト車のESPシステムは緩いところがある。タイトな交差点で加速するときに、後輪がわずかながら横へ出ることがあるのだ。

もっとも、安全を損ねるほどではない。システムをオフにして、すべりやすいコンディションを走っていても、劇的なことを起こすには、ドライバーがその気になる必要があるくらい安定している。それだけに、この不意な動きに驚くドライバーもいるだろうと思えるのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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