累計販売260万台SUV GLCにトップパフォーマンスモデル発表 メルセデスAMG GLC 63 S Eパフォーマンス
公開 : 2024.02.18 11:45
バッテリーとGLC 63 S Eの性能とは
定格出力80kW/最高出力150kW
GLC 63 S Eに搭載されるハイパフォーマンスバッテリー容量は6.1kWhで、定格出力80kW/最高出力 150kW(10 秒間)を発揮する。
このバッテリーは、航続距離を最大化することより、速やかな放電と充電を行えることを重点に設計されたものでだが、EV走行可能距離も16kmと実用的なレベルを確保しており、例えば深夜や早朝の住宅地などでは静かに排出ガスを出さずに走行することが可能だ。また、充電は交流充電による3.7kW対応であるという。
バッテリーセルを直接冷却
このAMG 400Vバッテリーが高性能を実現する土台となっているのが、革新的な直接冷却方式であり、非導電性の液体をベースとする高度な冷却液を循環させて560個のセルすべてを個別に直接冷却する方式を採用し常に最適な作動温度に保つ。
直接冷却方式を採用するために、厚さわずか数ミリという新しい薄型冷却モジュールを開発し、約14Lの冷却液を高性能電動ポンプでバッテリーの上から下まで全体に循環させて各セルを冷却するとともに、バッテリーに直接取り付けられた油水熱交換器内も通過する。
結果として熱は車載の2つの低温(LT)回路の一方に伝えられ、そこからまた車両のフロントにあるLTラジエターに伝わり、そこで外気中へ放出される。バッテリー内の熱分布を均一に保つように考えられたシステムだとメルセデスは述べた。
最終的にバッテリー温度は充放電の頻度に関係なく、平均45度という最適な動作温度範囲内に常に保たれ、高速走行時などバッテリーが高温となる過負荷時には、直接冷却によって温度を下げる保護メカニズムが設けられた。AMGハイパフォーマンスバッテリーはサーキットでハイブリッドモードによる高速走行を行うなど、加速(バッテリーが放電する)と減速(バッテリーが充電される)が頻繁に発生する場合でも優れた性能を維持するという。
出力密度がきわめて高いセルの使用は、有効な直接冷却があって初めて可能になるともメルセデスは語り、セルを個別に冷却する直接冷却方式により、バッテリーシステムはきわめて小型軽量なものとなった。
さらに軽量かつ強固な衝突構造を備えるアルミニウム製ハウジングを採用したことも、軽量化が実現できた要因のひとつと言え、この衝撃吸収構造により最高水準の安全性が確保されたと付け加える。
AMGダイナミックセレクト
AMGダイナミックセレクトには「エレクトリック」/「コンフォート」/「バッテリー」/「スポーツ」/「スポーツ+」/「レース」/「スリップリー」/「インディヴィジュアル」の8つのモードがあり、新しい駆動技術に合わせて精密な設定が施されているため、GLC 63 S Eの特性を効率重視からダイナミックなものまで広い範囲にわたって変化させることが可能と言う。
ドライブモードによって、駆動システムとトランスミッションのレスポンス/ステアリング特性/サスペンションの減衰特性/サウンドなど、主要なパラメーターが変更される。モードの選択は、メディアディスプレイのスイッチまたはAMGドライブコントロールスイッチで選択可能だ。
・ドライブモード「エレクトリック」:バッテリーが充電されていれば、停止状態から125km/hまでエンジンをオフにした状態でモーターのみの走行が可能。バッテリーが消耗したり、ドライバーが必要以上の出力を要求するとエンジンが始動し「コンフォート」モードに切り替わる。
・ドライブモード「コンフォート」:発進は、ほとんどの場合電気モーターで行い、その後はエンジンと電気モーターを状況に応じて使用する。例えば住宅地や都市中心部などを低速で走る場合にはEV走行、郊外道路や高速道路では両方を使用するハイブリッド走行となる。これにより全体としてバランスの取れた、燃費節約型の走りとなり、AMGスピードシフトMCT9速トランスミッションが早めにシフトアップを行うセッティングになることもこれに一役買い、サスペンションとステアリングの設定は快適性を重視した設定だ。
・ドライブモード「バッテリー」: エンジンと電気モーターは「コンフォート」運転モードのように状況に応じて動作する。最大の違いは、バッテリーの充電状態を一定に保つことであり、たとえばバッテリーが75%充電されている場合「バッテリー」ではこの範囲にとどまる。その後、電気モーターは最大25%までのブースト効果を発揮し、低消費電力に最適化され、回生によって充電される。ドライバーの利点は運転モードを変更するだけで、バッテリーの充電量を一定に保ち、電気モーターを使用したいときに活用する事ができる点だ。
・ドライブモード「スポーツ」:エンジンと電気モーターを使って発進し、その後は状況に応じて両者を組み合わせて使用する。電気モーターは最大65%までのブースト効果が働き、よってアクセルのレスポンスがより俊敏となるほか、シフト時間が短縮され、シフトダウンのタイミングも早まるため、スポーティな乗り味が強調される。サスペンションとステアリングもよりダイナミックな設定となる。
・ドライブモード「スポーツ+」:エンジンと電気モーターで発進し、その後は状況に応じて両者を組み合わせて使用する。電気モーターのブースト性能は最大80%まで高められる。よってスロットルレスポンスがさらに鋭くなり、きわめてスポーティな特性へと変化することに加え、アイドリングの回転数を高め、より素早い発進を可能にする。サスペンション/ステアリング/パワートレインはいっそうダイナミックな設定となる。
・ドライブモード「レース」:サーキットトラックでの使用を前提としているモード。全てのパラメーターが最大のパフォーマンスを発揮するように設定され、フルブーストや強力な回生ブレーキによってサーキット走行のための卓越したドライビングダイナミクスを生み出す。
・ドライブモード「スリップリー」:滑りやすい路面を安全に走れるよう、パワーを落とし、トルクカーブをフラットに保ち、電気モーターのみでの走行と回生ブレーキ調整はできなくなる。
・ドライブモード「インディヴィジュアル」:ドライブ/トランスミッション/AMGダイナミクス/サスペンション/ステアリング/エグゾーストシステムの設定を個別に選択して組み合わせることができる。
ハイブリッド駆動は、車両運動特性の制御にも役立っており、いずれかのホイールのスリップが過大に増加すると、ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)によるブレーキ介入に代えて、電気モーターによるトラクション制御を行うという。
具体的には、リアのリミテッド・スリップ・デフを介して後輪に伝達される電気モーターの駆動トルクを制御システムにより低減するもので、このためESPの介入は基本的に不要となり、限界付近でようやく介入することとなると述べる。
結果ESPの介入を限定的にすることにより、エンジンの出力を絞る制御が最小限となるため、エンジンの高トルクを保ったままのドライビングが可能となり、ブレーキング時に通常は失われてしまう熱エネルギーを回生してバッテリーを充電することも可能となる。
GLC 63 S Eはこのほか、統合型車両運動特性制御システムのAMGダイナミクスも搭載した。ESPの制御戦略や、四輪駆動、電子制御式リミテッド・スリップ・デフ(リア)を最適化することで、車両の安定性を損なうことなくアジリティを高めるものだという。
AMG ダイナミクスで特に注目すべきは、クルマがどのように反応すべきかを判断する能力を備えている点で、そのためにシステムは、速度/横方向加速度/ステアリングの舵角/ヨーレートなどを検出するセンサーを利用する。高度なフィードフォワード制御を行うことで、ドライバーの入力やセンサーからのデータをもとに、ドライバーが望む車両挙動を先取りするという。
しかもシステムの介入が乗員に気づかれたり、不快に感じられたりすることは無いと語り、優れたコーナリング性能と最適なトラクション、それに高い安定性を伴う非常に信頼性の高いドライブフィールを得ることができるとメルセデスは強調した。
・AMGダイナミクス「ベーシック」は、ドライブモードの「コンフォート」/「エレクトリック」/「バッテリー」に割り当てられるもので、ヨーを強く抑制した、きわめて安定した走りとなる。
・「アドバンスト」は「スポーツ」モードで起動し「ベーシック」と比べヨー抑制が緩和されるほか、アジリティが強化されることで、ワインディングロードなどでのダイナミックなドライビングをサポートする。
・「プロ」は「スポーツ+」モードの一部で、ダイナミックなドライビングのためのアシストがいっそう強化され、コーナリング時の俊敏性と路面からのフィードバックがさらに高まる。
・「マスター」は「レース」と組み合わされるもので、サーキットでダイナミズムとドライビングの楽しさを満喫したいというドライバー向けの設定だ。基本的にはわずかにオーバーステア傾向となり、よりダイレクトなステアリング、いっそうクイックな回頭性といった特性を備えた車両バランスを実現し、最大限の俊敏性を実現するとともに、走行性能を最大限に引き出す。