静かな「タイヤ革命」進行中? 内蔵センサー+先進ソフトウェアで危険回避へ

公開 : 2024.02.19 18:25

タイヤ内蔵センサーと高度な車両制御ソフトウェアにより、ハイドロプレーニング現象などを検知・回避するシステムが登場。米グッドイヤー社と独ZF社の最新技術を組み合わせた「インテリジェント」なタイヤとは。

グッドイヤーと独ZFが協業

わたし達は最近、インテリジェンスという言葉をよく耳にする。使われる場面によって意味合いが若干異なる言葉だが、自動車分野においては、さまざまな情報を収集・利用する電子システムで使われることがある。

1月、タイヤ製造大手のグッドイヤーと部品製造大手のZFが協業を発表した。グッドイヤーのインテリジェント・タイヤ・システム「サイトライン(Sightline)」と、ZFのシャシー制御ソフトウェア「キュービックス(Cubix)」を統合するという。

タイヤ内センサーとシャシー制御を組み合わせることで、ハイドロプレーニング現象の回避や安定性の向上を図る。
タイヤ内センサーとシャシー制御を組み合わせることで、ハイドロプレーニング現象の回避や安定性の向上を図る。    ZF & グッドイヤー

グッドイヤーのサイトラインは、タイヤの挙動を細かくモニターするセンサーによって、ハイドロプレーニング現象やグリップ不足による車輪ロックといった危険を事前に検知することができる。車輪の回転速度を検出するABSセンサーのような既存システムでは、問題が起こり始めてからでないと異常を示すことができない。

タイヤの内側に小型センサーが埋め込まれており、そこから取得したデータはクラウドに集積される。これにより、トレッドの摩耗や空気圧をモニターするだけでなく、路面の状態に関する情報を他のクルマと共有するなど、さまざまな可能性が広がる。

グッドイヤーは以前からデータ収集タイヤの開発に取り組んでおり、2016年のジュネーブ・モーターショーでコンセプトタイヤ「インテリグリップ(IntelliGrip)」を発表している。

2021年にはサイトラインを商用車向けに提供すると発表したが、その時点でもすでに何百万kmものテスト走行を積み重ね、「コネクテッド・タイヤの未来」を予見し、2027年までにすべての新製品にタイヤ・インテリジェンスを搭載することを目指していたという。

つまり、グッドイヤーとZFとのコラボレーションは、決して突飛なものではない。

ZFのキュービックスは、車内のすべてのシャシー・アクチュエーターを制御するソフトウェアの “ボス” であり、ステアリング、ダンピング、パワートレインなど、あらゆるシャシー機能を効果的にネットワーク化する。ZFは2020年、「新しいレベルの車両制御」の先駆けとしてキュービックスを発表した。

このキュービックスがサイトラインと連携することで、さまざまな事象にシャシーを対応させられるようになる。その一例がハイドロプレーニング現象で、発生をいち早く察知し、速度をチェックして悪化を防ぐ。

深刻なハイドロプレーニング現象が発生した場合、キュービックスは各タイヤから得られる情報に基づいてシャシー設定を調整し、安定化を図る。グッドイヤーによれば、緊急時以外にも、応答性を向上させ、ステアリングのダイレクト感を高めることで安定性につなげるという。

また、車両の状態をより正確に解釈できるため、既存の車両安定性システムによる不要な介入を最小限に抑えることもできるはずだ。

グッドイヤーとZFの提携はユニークなものだが、ピレリやコンチネンタルといった他のタイヤメーカーも、以前からインテリジェント・タイヤ・システムの開発に取り組んでいる。目に見えないところでタイヤは進化を続けている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    英国編集部テクニカル・ディレクター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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