数10年ぶりに「後輪駆動」復活! ボルボXC40 リチャージへ試乗 らしいリラックスSUV

公開 : 2024.02.29 19:05

小さな見た目でも乗員空間は驚くほど広い

フロントシートは快適。角度の調整域は広く、長距離でも身体が痛くなることはなかった。見た目は小さくても、乗員空間は驚くほど広い。

リア側も、問題なく大人が長時間過ごせる。USB-Cポートが2つ備わり、試乗車にはヒーターも装備されていた。アームレストにはカップホルダーが仕込まれ、ドア側には小物入れもある。チャイルドシート用の、ISOFIXポイントも左右へ備わる。

ボルボXC40 リチャージ・アルティメット(英国仕様)
ボルボXC40 リチャージ・アルティメット(英国仕様)

荷室容量は452Lで、クラス最大とはいえないものの、形状は使いやすそうだ。床面は高さを調整でき、その下の容量を増やすこともできる。

充電用ケーブルは、フロント側のボンネット内にしまえる。惜しいのが、キーフォブにボンネットの解錠ボタンがないこと。毎回、運転席下部のボタンを押す必要がある。

さて、ボルボの内燃エンジンが高い評価を得たことは稀といえるが、電動パワートレインは違うようだ。リアアクスルを駆動するモーターは、238psと42.7kg-mを発揮し、滑りやすい路面でも力強く確実にボディを進める。

2023年のアップデートで、シングルモーター版の動力性能を高めたとボルボは主張するが、その結果は実際に体感できる。青信号での発進も、高速道路の追い越し車線でも、力不足を感じることはない。

アクセルペダルの角度へ漸進的に反応しつつ、トルクの発生は滑らかで、リラックスして扱える。しかも、走行中は静か。歩行者へ接近を知らせるため、人工のエンジン音が車外で再生されるが、車内では聞こえない。

安心感が高く扱いやすいクロスオーバー

回生ブレーキは、デフォルトの効きか、ワンペダルドライブ可能な強さを選べる。オートマティック・モードを選ぶと、交差点への接近時などに減速感が増す一方、それ以外のアクセルオフではスルスルと惰性で走る。

ステアリングホイール裏のパドルで強さを調整する、といったシステムはない。それでも動作は滑らかで、ブレーキペダルを踏んだ時の摩擦ブレーキとの協調もシームレス。ペダルの位置が中央寄りで、やや右足で踏みにくいようではあるが。

ボルボXC40 リチャージ・アルティメット(英国仕様)
ボルボXC40 リチャージ・アルティメット(英国仕様)

操縦性は、洗練された印象。66kWhの駆動用バッテリーを積んだ試乗車は、低速域での乗り心地が特に快適だった。速度抑制用のスピードバンプをしなやかにいなしつつ、カーブで不安定になるようなこともない。

郊外へ出れば、しっかりした姿勢制御を活かし、シャシーの能力を引き出せる。試乗車にはマッド&スノー・タイヤが履かされていたが、アスファルト上ではグリップに不足はなかった。

後輪駆動だとしても、ボルボらしく、コーナリングバランスは安定志向。ステアリングホイールの反応は正確で、重み付けも一定ながら、感触は殆ど伝わってこない。

技術面を共有するポールスター2のように、シャープな一体感が伴うわけではない。運転を楽しめるバッテリーEVではないにしろ、安心感が高く扱いやすいクロスオーバーだとはいえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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