実は「いすゞ」のツインカム! ロータスとキアの2代目エラン 3世代比較(1) 快適性と操縦性が真骨頂
公開 : 2024.03.09 17:45
優れた技術設計を得ながら、成功を掴めなかった2代目エラン 操縦性では史上最高の前輪駆動 好適だったいすゞ製ツインカム 英国編集部が3世代を乗り比べ
操縦性では史上最高の前輪駆動
ロータス・エランの精神を受け継いだ、初代マツダMX-5(ロードスター)は、世界的な称賛を発売と同時に掴んだ。その様子を、2代目エラン、M100型の開発技術者はどのように受け止めていたのだろう。
2代目エランも一定の好評価を集めたものの、洗練性では劣るロードスターと比較し、「エランらしさ」が足りないという指摘も多かった。アメリカ市場が支持したのもロードスターで、2度の生産停止に追い込まれてしまった。
操縦性では史上最高の前輪駆動(FF)という、名誉ある称号も与えられた。だが数あるロータスの中で、深く愛されてきたモデルとはいえないだろう。英国編集部が揃えたエラン S1とS2、キア・エランという3台で、その真価を改めて確認してみたい。
2代目エランに前輪駆動を採用したこと自体が、間違いだったという人もいる。「テストを重ねる中で、より速かったんです」。と、最高経営責任者のマイク・キンバリー氏は、そんな疑問へ回答している。
だとしても、当時のロータスを傘下に収めていたゼネラルモーターズ(GM)は、小さなスポーツカーに適用できる、エンジンを縦置きしたドライブトレインを生産していなかった。この事実が、FFを選んだ決定的な理由になった。
GMにとって、ロータスを保有する価値は、開発コンサルタントとして機能すること。前輪駆動技術を高めることが、アメリカからの投資を正当化する手段といえた。どんなFFモデルを生み出せるのか、という問いへ答える必要があった。
エランには好適だったいすゞ製ツインカム
その結果、パワートレインを供給したのが、同じく当時はGM傘下にあった日本のいすゞ。予想外の選択といえたが、実際のところ素晴らしいユニットで、エランには好適だった。
シリンダーの形状はほぼスクエアで、16バルブのツインカムヘッドを載せ、インジェクションでガソリンを供給。唯一、最適といえなかった要因は、スチール製という重いブロックにあった。
自然吸気の場合、最高出力は129ps/7200rpmと平凡な数字だったが、ロータスによるチューニングとインタークーラー付きのIHI社製ターボで増強。初期型のエラン S1では、165psを発揮した。
ノンターボ・エンジンも選べたが、価格差は2000ポンドと小さく、購入者は129人。殆どが、ターボエンジンを選択した。
デイブ・ターナー氏が所有するガンメタリック・グレーのS1は、1991年式のSEターボ。小さなツインカム・ユニットらしいピーキーさは漂うが、3000rpmからブーストが立ち上がり、レブリミット目掛けてパワーが湧き立つという、楽しい特徴がある。
それ以前のロータス・ツインカムのように甘美なサウンドは放たないものの、インジェクションの4気筒としては音響も想像以上。耳障りなほどうるさくもない。
技術力の高さを証明するのが、パワーの展開方法。パワフルなFFモデルにありがちな、フロントタイヤの加速時のスリップや、コーナリング時に暴れるトルクステアは見事に抑え込まれている。