皮肉な初代「ロードスター」エンジン ロータスとキアの2代目エラン 3世代比較(2) FFの可能性を証明
公開 : 2024.03.09 17:46
優れた技術設計を得ながら、成功を掴めなかった2代目エラン 操縦性では史上最高の前輪駆動 好適だったいすゞ製ツインカム 英国編集部が3世代を乗り比べ
復活で800台が提供されたエラン S2
ゼネラルモーターズ(GM)がロータスを売却した翌年、M100型の2代目エランは復活を果たす。それを決めたのは、英国ブランドを買収した当時のブガッティ・オーナー、ロマーノ・アルティオーリ氏だった。
グレートブリテン島東部、ヘセルの工場を視察中に、未使用のいすゞ製エンジンが大量に残されているのを発見。その理由に、疑問を抱いたことがきっかけだった。
かくして、新しい排出ガス規制に対応した触媒を、エグゾーストシステムに追加。ロータス・エラン S2として、1994年からM100型は生産が再開された。1995年までに、800台が提供されている。
ロイヤル・ブルーのS2は、ジャスティン・プレスランド氏の1995年式。ロータスの量産車5万台を記念した、特別仕様だ。専用色での塗装とホイール、控えめに張られたステッカーなどが、差別化として与えられている。
販売方法は特殊で、慈善団体のプリンスズ・トラストへ1度寄贈され、寄付金のキャンペーンを通じて抽選でオーナーが決まった。ハンドブックには、チャールズ皇太子の署名が残っている。
運転してみると、触媒の追加で最高出力は10ps低下しているものの、動力性能に目立った違いは感じられない。スペックを確かめると、高回転域のみパワーが絞られているのがわかる。最大トルクは殆ど変わらず、0-97km/hダッシュも同時間でこなす。
初代マツダ・ロードスターのエンジンへ
ジャスティンの特別なエラン S2は、走行距離4万2000kmほど。整備が行き届いており、シフトレバーの動きはタイト。ブレーキやクラッチの調子も素晴らしい。運転のしやすさへ配慮した、ロータスの結果を体感できる。
ステアリングホイールは、S2の方が僅かに小さい。このおかげで、フロントタイヤは一層機敏に反応し、繊細に操れる。少し上品な印象のS1と比べて、レスポンシブでエンターテイメント性が増している。
ヘセルに残されていた、いすゞ製エンジンを使い切ったところで、S2の提供は終了。そこへ目を付けたのが、少々古いクルマのライセンス製造を得意としていた、韓国のキアだった。1992年まで、独自に設計したモデルを生産してこなかったほど。
キアがパワーユニットに選んだのが、1.8LツインカムのBPユニット。皮肉にも、初代マツダMX-5(ロードスター)にも搭載される4気筒エンジンのコピーが、2代目エランのボンネットへ収まることになった。
同じくMX-5に搭載された、1.6Lユニットよりトルクが太いとはいえ、活発に走らせるには、しっかり回し切る必要がある。そのかわり、サウンドは胸を刺激する。積極的に変速する喜びも得られる。
トランスミッションはセフィア社製で、低い段ではレシオが高め。これに慣れれば、思い切り一般道で楽しめる。