除草剤、ゴルフボール 衝撃の連続、ビッグモーター不正問題のこれまでを振り返る 伊藤忠はどう支援に乗り出すのか?
公開 : 2024.02.22 07:25
・昨年から続くビッグモーター経営陣の交代劇、行政処分、家宅捜索
・今年に入ってからも現職社員の逮捕や店舗閉鎖が進み厳しい状況変わらず
・どう再建を図る? 打撃を受けた中古車業界の変化は?
もくじ
ー始まりは2023年3月熊本浜線店の指定取り消しから
ーことし1月、ついに環境整備点検関連で初めて逮捕者が発生
ー店舗の閉鎖・統合、板金工場の閉鎖が進行する
ー中古車業界の「クリーン化」は進むのか?
ー教習所では教えてくれないクルマの売買と使い方とは
始まりは2023年3月熊本浜線店の指定取り消しから
AUTOCAR JAPANでは、2023年3月に熊本浜線店が指定取り消しの行政処分を受けた頃から、パンク保証制度の悪用、不正車検の実態などBM社の不正行為に関する記事をいち早く掲載してきた。同年6月下旬に弁護士らで構成される特別調査委員会が保険金不正請求に関する「調査報告書」を同社に提出し兼重宏行前社長がその内容を認めてからは、状況が一転。テレビや新聞、週刊誌などによる熾烈な報道合戦が始まったのである。
当初はゴルフボールで車体を叩き損傷範囲を広げて保険金を水増し請求するなどの問題が大きく扱われたが、その後は大手損保とのいびつな関係、異常な環境整備点検、新入社員へのパワハラや暴力、前副社長の罵倒LINE、自主退職に見せかけた不当解雇、下請け業者への多額の未払い、無許可での街路樹伐採など次から次へ信じられない事実が明らかになり、連日メディアを賑わせた。
昨年7月25日には兼重社長・副社長が退任し、新たに和泉伸二社長・石橋副社長が就任。経営陣の新体制がスタートしたが、不正行為の上に成り立っていた年間5000億円以上の売り上げは激減。自力再建は厳しい状態となり、11月には伊藤忠グループが支援の検討に入り現在もデューデリジェンス(買収監査)を行っている。
10月下旬からは指定工場の取消しや事業停止などの行政処分がはじまり、11月末には保険業法の規定に基づき、BM全店で損害保険代理店としての登録が取り消されており、12月半ばには警視庁と神奈川県警が街路樹枯死の件で前副社長兼重宏一氏宅に家宅捜索が入っている。
ことし1月、ついに環境整備点検関連で初めて逮捕者が発生
2024年に入ってからの最も大きなニュースといえば、環境整備点検で初の逮捕者が出たことであろう。1月30日、川崎店のスタッフに街路樹等の伐採を指示したとして器物損壊容疑で環境整備推進委員の肩書を持つ現社員のK氏が逮捕された。2月16日には神奈川県警が街路樹伐採を「会社の業務」であったとして、BM社じたいを書類送検し、さらに2月19日には平塚店でも同様の容疑でK氏を再逮捕している。
筆者がK氏の逮捕で驚いたことは2つある。K氏の逮捕じたいは昨年12月初旬から信ぴょう性の高い噂として関係者から聞いていたし、1月下旬には逮捕間近であることも聞いていた。故に逮捕自体は驚くことではなかったがNHKを筆頭に最初から実名報道だったことは意外であった。
さらにK氏の逮捕後、K氏の指示で街路樹伐採を行った川崎店の店長ら2名が書類送検されたことも驚きであったが、これらは「環境整備で初逮捕」という手柄をアピールしたい神奈川県警の思惑もあったとされる。
K氏はほぼすべての店舗での街路樹伐採に関わってきたので、今後は再逮捕がどんどん増えていくと思われる。同時に、K氏の指示で除草剤をまくなどした店の従業員らに対しても書類送検が続くことになるだろう。
被害にあった街路樹を管理する東京都や群馬県、福岡県など約20の自治体から被害届が出ており、すでにビッグモーター側が非を認め、謝罪し原状回復費用などを支払っているケースもある。