除草剤、ゴルフボール 衝撃の連続、ビッグモーター不正問題のこれまでを振り返る 伊藤忠はどう支援に乗り出すのか?

公開 : 2024.02.22 07:25

店舗の閉鎖・統合、板金工場の閉鎖が進行する

現在、伊藤忠のデューデリジェンスは最終段階に入っており、このままいけば今春以降、BM社は伊藤忠傘下のもと新たな中古車販売会社としてスタートすることになる。なお伊藤忠が支援する条件のひとつに、「創業家との断絶」があるが、ここでいう創業家とは兼重親子(前社長・前副社長)を意味する。

彼らは現在どこにいるのか。父親の兼重宏行氏は昨年7月の退任会見以降姿を現していないし、会見に現れなかった息子の宏一氏も依然として所在は不明だ。すっかり有名になった目黒の60億円豪邸に今も住んでいるのだろうか?

ビッグモーター不正問題
ビッグモーター不正問題    加藤博人

なお、近年、環境整備点検を主導していたのは宏一氏である。逮捕されたK氏の証言や警察の踏み込んだ捜査によっては宏一氏逮捕の可能性もゼロではないだろう。BM社も「警察の捜査には全面協力する」姿勢を見せているし、BM社崩壊のA級戦犯とされる宏一氏が逮捕されるとなれば、最強の「創業家との断絶」になるのは間違いない。

また、2月末~3月上旬にかけては各地の店舗が閉鎖、統合され、保険金不正請求の現場となった板金工場の閉鎖も進むことになる。現在は本社となっている多摩店の板金工場も2月中には閉鎖される。旗艦店でもあり本社機能も兼ねる多摩店の板金工場がなくなるのは関係者にとってもかなりの衝撃だろう。

なお、すでに閉鎖されている板金工場の中には再開する工場が出る可能性もある。BMの板金工場は2019年にテュフ・ラインランド・ジャパンのゴールド認証を取得しており、修理工場としての設備や仕様は非常にレベルが高い。買収元がそれらを高く評価することは十分に理解できる。

中古車業界の「クリーン化」は進むのか?

BM社では保険金の不正請求だけではなく、中古車売買のシーンにおいても様々な不正行為が行われていたことが明らかになっている。中古車購入時や買取時における詐欺的な行為もあり、中古車の購入に不慣れな人の中には気づかないうちに被害者になっているケースも多々あると考えられる。が、このような問題はBM社だけではもちろんない。保険会社は現在も疑義のある請求について調査を続けているので、今後、他中古車店でも驚くような不正事実が判明する可能性もある。

このような流れを受けて中古車業界では信頼回復に努める動きが進んでいる。その最たるものが自動車公正取引協議会による、2023年10月1日から導入の「支払総額表示」が義務化されたことだろう。

ビッグモーター不正問題
ビッグモーター不正問題    加藤博人

なぜ、義務化されたのか?これはかつてBMなどの大手中古車販売店が取っていた手法で、車両価格を卸値レベルの安い設定にし、客の注目を集める。

しかし、いざ契約となるとボディやガラス、タイヤなどのコーティングや各種の保証サービスなど、本来はオプションで設定されるものを「外せない」費用として車両価格に盛り込む。表示価格100万円のクルマが見積書では法定費用とは別にあれこれオプションをつけられて実際に支払う金額は150万円を超えていた…というケースである。

この支払総額表示の義務化はBM問題が明らかになる数年前から準備が始まっており(業界では悪徳中古車店の常とう手段として行われており、国民生活センターなどにも数多くの苦情が寄せられていた)、たまたまその施行日が2023年10月1日だったということである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。
  • 編集

    香野早汰

    Hayata Kono

    1997年東京生まれ。母が仕事の往復で運転するクルマの助手席で幼少期のほとんどを過ごす。クルマ選びの決め手は速さや音よりも造形と乗り心地。それゆえ同世代の理解者に恵まれないのが悩み。2023年、クルマにまつわる仕事を探すも見つからず。思いもしない偶然が重なりAUTOCAR編集部に出会う。翌日に笹本編集長の面接。「明日から来なさい」「え!」。若さと積極性を武器に、日々勉強中。

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