えっ、おもちゃがクルマを変えた? レゴから生まれた「独特すぎる」ハイブリッド技術とは
公開 : 2024.02.23 18:05
ルノー独自のハイブリッド・パワートレイン「Eテック・ハイブリッド」は、1人のエンジニアがレゴブロックから着想を得たという。欧州のハイブリッド車における「革新的」なアイデアを掘り下げてみよう。
子供のレゴブロックから着想を得たハイブリッド
約10年前、ニコラ・フレモーというルノーの若いエンジニアがクリスマス休暇に子供たちとレゴのおもちゃで遊んでいたとき、超高効率の新しいハイブリッド・トランスミッションを思いついた。そして、それは迫りくる電動化時代に向けて必要とされるものだという確信が、彼の中にはあった。
当時、ハイブリッド車を大量生産していたのは、トヨタを筆頭に日本のメーカーくらいだった。しかし、フレモー氏のアイデアはもっとシンプルで、従来の前輪駆動車向け横置きエンジンに適用でき、コストも安く抑えられる可能性があった。
中でも、あらゆるパワートレインにおいて効率の「敵」である摩擦を劇的に低減する、2つのアプローチが特に革新的だった。
1つは、従来のクラッチを不要にし、電気モーターで駆動すること。高速域ではエンジンにバトンを渡す。
もう1つは、パワーロスを伴うシンクロメッシュ機構を、より効率的なドッグクラッチ式に置き換えることだ。
その効果は目を見張るものがあった。従来の駆動システムよりも20%も効率が上がる可能性を秘めていたのだ。簡単に言えば、ディーゼル車と同じくらい効率的なものだ。
また、EVのような走行特性を持つため、電動化への入り口として導入しやすいシステムでもあった。
フレモー氏のアイデアは、パリ西部にあるルノー・グループの技術研究所「テクノセンター」の肥沃な環境ですぐに結実し、本格的な開発プログラムへと発展していった。
ドライブモードは合計15種類 可能性を秘めたEテック
10年にわたる開発期間を経て、ルノーは現在「Eテック・ハイブリッド(E-Tech Hybrid)」という名称で独自のクラッチレス・ハイブリッド・パワートレインを展開している。2基の電気モーターとガソリンエンジンを組み合わせたもので、現行型はすでに第2世代にあたる。
2基のモーターのうち、一方は横置きエンジンの従来のクラッチがある場所に取り付けられている。もう一方はギア駆動のスターター・ジェネレーターの役割を担い、ガソリンエンジンの始動や電力回生だけでなく、必要に応じて110km/h以上のスピードでもクルマを走らせることができる。
Eテック・ハイブリッドの仕組みをもう少し掘り下げよう。駆動用モーターは2速トランスミッションと、ガソリンエンジンは4速トランスミッションと組み合わされる。これによりモーターの小型化を実現した。
ギア比は複雑だが、それぞれの「トルク・ソース」を巧みに組み合わせることで、電気のみまたはエンジンのみの巡航など、合計15種類のドライブモードを実装できる。将来の改良では、さらに増える可能性もあるとエンジニアは語っている。
第1世代のEテック・ハイブリッドは、自然吸気の1.6Lガソリンエンジンと200Vの1.2kWhバッテリーを組み合わせ、合計出力146psを発生する。2020年に導入され、現在はクリオ(日本名:ルーテシア)、キャプチャー、アルカナ、ルノー傘下のダチア・ジョガーに搭載されている。
第2世代では専用設計の1.2L 3気筒ガソリンエンジンをベースに、400Vの2.0kWhバッテリーを搭載、合計出力は200psに達する。新型SUVのオーストラルをはじめ、ラファール、エスパスに採用される。
画像 レゴから生まれたアイデア+F1技術の異色コラボ【ルノーEテック・ハイブリッド搭載のルーテシアを写真で見る】 全13枚