まるで小さな「トゥアレグ」? 新型フォルクスワーゲン・ティグアンへ試乗 日常へ溶け込む
公開 : 2024.03.05 19:05
プレミアムSUVと呼べそうな、上質な乗り心地
アクセルペダルを踏み込みエンジンを吹かすと、やや張り詰めたノイズが響いてくる。とはいえ、ロンドンなどの市街地で施行される、ゼロエミッション・ゾーンへ侵入する機会が多いなら、好適なパワートレインになりそうだ。
また重心位置が低く、姿勢制御は安定していた。燃料タンクの容量を削ることで、駆動用バッテリーを積んでも、荷室容量は犠牲になっていない。
3代目ティグアンは、シャシーにも大幅な改良を受けている。新しい2バルブダンパーを獲得し、ゴルフGTIにも採用される、ビークル・ダイナミクス・マネージャー・システムで制御。快適性と敏捷性の両立が図られた。
サスペンションは15段階に調整可能で、コンフォートとスポーツとの間では、驚くほど特性が変わる。特にコンフォート・モードは、石畳など、ホイールの垂直方向の動きをしなやかに吸収。プレミアムSUVと呼べそうな、上質な乗り心地を披露した。
フォルクスワーゲンの技術者は、魔法のじゅうたんのような乗り心地は狙わなかったと話す。路面との接地感を保ちつつ、走行時の快適性を向上させることへ注力したという。
それは、ステアリングホイールやシートベースへ伝わる、不快ではないフィードバックで達成されている。しなやかでありながら、不自然なグラつきはなし。カーブでのボディロールも、約1.7tあるSUVとしては、驚くほど抑制されている。
日常へ溶け込み、快適な移動を叶える
今回の試乗は南フランスの道が舞台だったが、筆者はコンフォート・モードへ強く惹かれた。カーブでは多少のボディロールを示すが、不安に感じるほどではない。
その巧妙な足さばきに、スポーツ・モードを選ぶ人がどの程度いるのか、疑問を覚えるほど。フォルクスワーゲンは、他に家族が乗っていない出張の帰り道など、長距離を飛ばしたい時に適すると主張するが。
確かに、身のこなしは引き締まるものの、重心位置の高いSUVという束縛からは逃れられない。カーブへ積極的に飛び込めば、高めの位置の上半身は、サイドボルスターの間で左右に振られてしまう。
ステアリングラックも新設計。反応は正確で、レシオは適度にクイックで、扱いやすい。活発に運転しても、操る自信は保たれる。
燃費は、試乗したディーゼルターボで18.8km/L。長距離移動が多いなら、やはり訴求力はまだ高い。プラグイン・ハイブリッドは、こまめに充電し、走行可能距離の範囲であれば、ガソリンを燃やさず移動も可能だろう。
わたしたちの日常へすんなり溶け込み、快適な移動を叶えてくれるティグアン。高さ方向で10mm増えた車内空間や、33L大きくなった荷室など、使い勝手は2代目から確実に引き上げられている。アップデートされたインテリアも好印象だ。
まさに、クロスオーバーのゴルフという謳い文句どおり。英国での試乗が待ち遠しい。
◯:比較的小さなサイズで大きな実用性 優秀なパワートレイン 知的なインフォテインメント・システム
△:プラグイン・ハイブリッドの価格 少し荒いディーゼルターボ 期待ほどではないチャットGPT