「みなぎる」パワー! 長距離も余裕 ジャガーFタイプ 夜間や雨天の視界にヒトコト 長期テスト(2)
公開 : 2024.03.09 09:45
歴史的な節目を迎えたジャガーのクーペ 同社最後のV8エンジンを改めて堪能 失ったものの大きさと今後への期待を、長期テストで掘り下げる
もくじ
ー積算3260km 驚くほど広いクーペの荷室
ー積算7299km 長距離を運転している実感が湧きにくい
ー余裕の動力性能が、長距離移動の安楽さを生む
ー惜しいロードノイズとボディサイズ
ー積算9188km 夜間や雨天時の視界にヒトコト
ーテストデータ
積算3260km 驚くほど広いクーペの荷室
筆者が以前に運転したジャガーFタイプはコンバーチブルだったから、クーペの荷室の広さには驚いてしまった。リアハッチは大きく開き、フロアはフラット。大人2名で長期休暇の旅行へ向かえる容量がある。
開口部の位置は高く、重い荷物は積みにくいかもしれない。しかし、流麗なスタイリングをまとうモデルの場合、すべてを叶えることは難しい。
積算7299km 長距離を運転している実感が湧きにくい
長期テストにやってきたジャガーFタイプ R75は、短期間に走行距離を延ばしている。安楽だから、長距離を運転しているという実感も湧きにくい。2か月も経たないうちに、4000km以上増えてしまった。
1週間当たり、800kmは走っている計算になる。週末は、自分のクルマを運転することが殆どだから、単純に割ると平日の平均で160km。確かに、毎日忙しくグレートブリテン島を移動している。それでも、Fタイプでの移動が辛いと感じた記憶はない。
これには、明確な理由がある。それが、ジャガー製の5.0L V型8気筒スーパーチャージド・エンジン。最高出力575psを誇り、0-100km/h加速を3.9秒でこなす剛腕の持ち主ながら、とても滑らかに回転し上質でもある。
センターコンソールのつまみで、ドライブモードをダイナミックにしない限り、エグゾーストノートは優しい。シフトセレクターを横にスライドし、変速をスポーティに変えなければ、穏やかに運転できる。
余裕の動力性能が、長距離移動の安楽さを生む
気分次第でダイナミック・モードを選び、右足を深めに傾ければ、背中を突かれる勢いで加速が始まる。背筋がゾクゾクするような迫力のサウンドも、うるさくない範囲で奏でる。とはいえ、そんなおふざけを頻繁に楽しむわけではない。
普通に運転していても、Fタイプ R75は極めて速い。比べれば、アクセルレスポンスはマイルドで、テンポ良くシフトアップしていくが、充分以上のパワーとトルクで物足りなさは皆無。筆者にとって、ダイナミック・モードはエンターテイメントのためにある。
この余裕ある走りが、長距離移動の安楽さを生んでいるのだと思う。110km/hでの走行時の回転数は、2000rpm以下。1度の給油で走れる距離はさほど長くないし、車内が静寂というわけでもない。だが、豊かな動力性能がそれを補う。
5.0L V8エンジンのもう1つの恩恵といえるのが、フロントノーズの重さ。パワフルなバッテリーEVが増える中で、筆者は前寄りの重量配分を再評価するようになった。
コーナー目がけて勢いよく飛び込み、ブレーキングで荷重移動。負荷の掛かるフロントタイヤはロックを堪えつつ、素早く速度を落としながらノーズの向きを変えていく。
基本的に、Fタイプはアンダーステア傾向。安定志向でありつつ、濡れた路面でも優れたグリップを発揮する。
知的な四輪駆動システムは、シャシーの挙動を確認しながらトルクを緻密に割り振り、パワー・オーバーステアを巧みになだめる。しかし、リアアクスルが主体の制御だから、脱出加速時はリアから押し出されるような感覚を伴う。