【軽トラの盗難が激増!】 軽トラがスカイラインより多く盗まれている事実 背景を調べてみた

公開 : 2024.03.03 06:25  更新 : 2024.03.03 09:32

軽トラックは日本独自の規格、米国にはないカテゴリー

軽トラが盗まれやすい理由に直結しているかはわからないが、軽自動車=日本独自の規格で設計されていること、そしてこれまでに自動車メーカーが正規に新車販売をした履歴がないことも考慮すべきだろう。

軽自動車は660cc以下の極小排気量であり、ボディサイズもアメリカの「自動車」には存在しない小さなものである。それゆえ「自動車」として25年ルールのもとで輸入するほかに「ATV」/「オフロードヴィークル(ハイウェイや高速道路を走ることはできず、家の周辺の車道や私有地を走るためのクルマ)」など、日本でいうところの小型特殊車両や農業用作業車のような扱いで25年待たずとも輸入・登録して公道走行が可能になる場合もある。

軽トラの盗難が激増!
軽トラの盗難が激増!

例えば、ATVとして輸入登録をするならば「前進と後退しかギアが入らないようにする」/「最高速度25マイル(40km/h)に設定」/「州間道路はNG。走行する道路を限定」などの条件をクリアすれば、州によっては新車で登録ができる場合もある。

またそもそも公道を走らず私有地内の使用に限れば登録自体も不要となる。実際、アメリカの中古車販売サイトでは、2022年モデルの走行距離4~5kmのダイハツ・ハイゼット・ジャンボエクストラ4WDが427万円という価格で販売されている。ナンバープレートには「FARM USE」(農場専用)と記されているので、これは公道を走るのではなく農場など限られたエリアでのみ使用することを前提としているのだろう。

アメリカでは「自動車」以外の方法で新車であっても登録できる可能性があるが、もっとも安全で確実な方法はやはり製造から25年を待ってFMVSS(アメリカの保安基準)の縛りを受けずに登録することである。

今、アメリカでは軽トラックの扱いをめぐって州によっては突然新たな規制を掛けて登録が取り消される事態も発生している。

※25年経過を待たず、ATVやオフロードヴィークルとして年式に関係なく輸入する手段はアンダーグランドなやり方で正式に認められた手法ではない

軽トラ価格がアメリカで高騰している

日本の軽トラックがアメリカで大変な人気になっていることは以前、AUTOCAR JAPANでお伝えした。

あれから4年近く経過したが、軽トラ人気は高まるばかりである。アメリカやカナダだけではない。前述したように近年はオーストラリアでの人気も価格も高騰している。オーストラリアは左ハンドル車の通行を厳しく規制していることもあって右ハンドル車は好都合でもある。

軽トラの盗難が激増!
軽トラの盗難が激増!

軽トラは米国では「K-truck」や「MINI truck」などと呼ばれて親しまれており、専門の販売サイトも多数ある。そこには1990年代前半から2022年頃までで、走行距離5kmの完全に新車であろう軽トラまでずらっと並んでいる。

いくつか例をあげてみよう。
・1992 Daihatsu Hijet Climber 4WD(2万3385km)/174万467円
・2000 Daihatsu Hijet Dump 4WD(8万124km)/157万4451円
・2010 Suzuki Carry Dump 4WD(3万8400km)/176万7036円
・1992 Honda Acty Attack 4WD(7万5902km)/128万6550円
・1995 Mitsubishi Minicab Firetruck(2万1667km)/174万467円
・2003 Suzuki Jimny 4WD(5万3884km)/68万5980円

中には新車で400万円以上で販売されているモデルもあるが、1992年でも2010年でも値段がほぼ変わらないというのも興味深い。軽トラ以外にもジムニーを見つけたが、軽トラのほうが高額で取引されている。

アメリカで人気の理由は
・走行距離が全体的に少ない。
・農作物や狩りの獲物を広い荷台に積むことができる。
・一人で動くにはちょうどいいサイズで機動力が最高!
・日本製ゆえに古くても信頼性が高くパーツの入手もスムーズ。
・構造がシンプルで専門的な技術がなくても修理ができる。
・実用面ではもちろんだが最近はカスタムする人が増えている。カスタムパーツも豊富。
などなど、なかなかの人気ぶりだ。

また、25年ルールを待たずとも新車で輸入可能なモデルとして、とある米国の軽トラ専門の販売サイトでは以下が紹介されている。

『オフロードヴィークル』として輸入可能なモデル

スズキ・エブリィ 1999年から現在まで/ノンターボモデルのみ
スズキ・キャリイ 1999年から現在まで/ノンターボモデルのみ
マツダ・スクラム 1999年から現在まで/ノンターボモデルのみ
ダイハツ・ハイゼット 2008年から現在/トラック、バン、デッキバン
三菱ミニキャブ 1999年から現在まで/トラックおよびバンのモデル
日産クリッパー 1999年から現在まで/NT100トラックとNV100バン

世界中で人気が高まるにつれ、残念ながら盗難の台数も増えている。周囲に軽トラオーナーの家族や友人がいたらぜひ、盗難の危険が高まっていることも教えてあげてほしい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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