ポルシェ・カイエン 詳細データテスト 無駄なアシストのないV8 クラス最高水準のドライバビリティ

公開 : 2024.03.09 20:25

走り ★★★★★★★★★☆

比較的下位グレードのカイエンに戻ってきたV8パワーはどんなものか。これがなかなかいい。この仕様では、取り立てて爆発的でも騒々しくもなく、最新V8よりオールドスクールでゆったりしたキャラクターなのがいいのだ。

控えめな個性と有機的なフィールがあり、どんな場合でも楽しい相棒で、ドライバーをしかめっ面にするようなことはない。

強烈にパワフルではないが、好ましいキャラクターのV8を積むカイエンS。トランスミッションやブレーキもスムースだ。
強烈にパワフルではないが、好ましいキャラクターのV8を積むカイエンS。トランスミッションやブレーキもスムースだ。

テレメトリーのデータも気になるところだろう。ウェットコンディションで0−97km/hが5秒ジャストというのは悪くないが、速いとも言えない。実際、この手のクルマとしては妥当な感じだ。4速固定での48−113km/hは6.3秒。強烈なオーバーテイクは望めないまでも、まずまずのペースで追い越しをこなすだろう。

ジャンルの違うクルマだけに同じように比較はできないが、MTのBMW M2は同じ条件で8秒、911GT3 RSはカイエンSより0.5秒速かっただけだ。マイナーチェンジ前のモデルでは、ターボGTが今回より1.1秒速いタイムを出している。

だから、フレキシビリティがここでは重要なワードだ。このエンジンのレッドゾーンは6800rpmと高めだが、ピークトルクは2000rpmから出る。パドルでの手動変速も可能だが、オーバーテイクでもしない限り必要になることはない。ギアボックスのコントロールモジュールは一般的に、スロットルペダルのポジションを正確に拾う。

カイエンSとE−ハイブリッドに採用された、新型ブレーキブースターも特筆もの。どちらもタイヤ表面温度を検知し、ABSの制御に利用することで、摩擦と回生、ふたつのブレーキの移行をスムースにする。実際、フィールはよく、どこまでもプログレッシブだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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