「オンロード」で感銘 ベストバランスSUV BMW X3へ試乗 相性のイイ2.0Lディーゼル

公開 : 2024.03.11 19:05

相性ピカイチの20d 低く軽いクルマのよう

X3 20dが積む2.0L 4気筒ディーゼルは、このモデルとの相性がピカイチ。ギア比が低めの8速ATが滑らかに変速を続け、高負荷でも気張る必要はない。エンジンの存在感を高めることなく、不足ないトルクが湧き出てくる。

端的にいうなら、実直。ライバルに劣らない、加速力と扱いやすさを披露する。

BMW X3(英国仕様)
BMW X3(英国仕様)

X3 30dは、余裕のパワーとトルクが手に入る。3.0L 6気筒ディーゼルは、0-100km/h加速を20dから2.0秒以上縮め、市街地も高速道路も安楽だ。

プラグイン・ハイブリッドの30eは、駆動用バッテリーの充電量で印象が変わる。充分に電気が残っていれば、駆動用モーターがアシストし軽快。残量が乏しくなると、動力性能へ明確な陰りが出る。燃費も悪化してしまう。

乗り心地は良好。Mスポーツが履く19インチ・ホイールでも、タイヤのサイドウォールは厚めで、路面の隆起部分などを優しく吸収。サスペンションも良く機能し、重心が高めのSUVにありがちな、横方向へお釣りが残るような揺れも殆ど感取されない。

身のこなしは適度に引き締まり、実際より低く軽いクルマに乗っているかのよう。X5へ通じる、落ち着いた操縦性で、カーブへ高めの速度で侵入しようという気にさせる。絶妙なバランスだ。

オプションのヴァリアブル・ダンパー・コントロール(VDC)を装備すると、減衰特性を3段階から選べ、動的特性が一層広がる。四輪駆動システムと確かなグリップ力で、滑りやすい路面でもトラクション不足は感じられなかった。

このクラスのベストバランスSUV

ステアリングフィールは、情報量が豊かなステルヴィオと、淡白なQ5との中間。オプションの可変レシオシステムを組めば、低速域での扱いやすさが増す。切り込んでいくと若干の不自然さも現れるが、装備する価値はあるだろう。

トラクション/スタビリティ・コントロールの制御も巧妙。オンのままスポーツ+モードなどを選んでも、限界付近まで介入は目立たない。後輪駆動のBMWのように、アクセルペダルの加減でコーナリングラインを調整するのは難しいが。

BMW X3(英国仕様)
BMW X3(英国仕様)

X3の全体的な操縦性は、スポーティなSUVとして、われわれの期待に応えるもの。回答性はクイックで、姿勢制御はタイト。鋭いコーナリングでも、秀でたグリップ力を発揮する。意欲的なドライバーにとっても、望ましいモデルだといえる。

ポルシェ・マカンの方が、走りの躍動感は高いだろう。だが、洗練性ではX3が有利だ。

燃費は、20dで平均17.3km/Lに届いた。プラグイン・ハイブリッドの30eでは、駆動用バッテリーが満充電なら35.0km/Lも夢ではない。充電が切れると、10.0km/L前後へ落ち込むとしても。

ミドルサイズの上級ファミリーSUVを検討する多くの人にとって、選択肢の上位に入る完成度を持つX3。優れた快適性を実現しつつ、BMWへ期待する動的能力もしっかり備わっている。

内装の上質さや乗り心地でいえば、アウディQ5の方が勝る。しかし、運転の楽しさも忘れたくないという人へ推したいと思えるのは、X3の方。このクラスでの、ベストバランスにあると思う。

◯:高級感のあるインテリア 洗練されたパワートレインのラインナップ 乗り心地と操縦性の好バランス
△:やや伸び悩む燃費 高回転域での洗練性で劣るディーゼルターボ ライバルへやや劣る装備

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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