30年物のV8エンジン 古いシャシーも再利用! MG RV8 TVRグリフィス マーコス・マントラ(1)

公開 : 2024.03.17 17:45

1990年代に1つの黄金期を迎えた、英国のV8オープン・スポーツ ローバー社の3.9Lユニットを積んだ3台 古いシャシーを再利用 英国編集部がその魅力を振り返る

1992年に発売された3台のV8スポーツ

ローバーが設計したV8エンジンは、かなり遅咲きといえた。その源流には、1958年のゼネラル・モーターズ社製ユニットが存在するが、本来の可能性を発揮するまで長い時間を要した。

1973年のMGB GT V8と1978年のトライアンフTR8は、目立った成功を残せなかった。しかし1990年代に入ると、アルミ製3.9L V8エンジンの能力を発揮させるべく、有能なスポーツカーが英国で次々に登場した。

レッドのMG RV8と、ダークブルーのマーコス・マントラ、パープルのTVRグリフィス
レッドのMG RV8と、ダークブルーのマーコス・マントラ、パープルのTVRグリフィス

この遅咲きの理由には、初代ランドローバーレンジローバーの人気があった。想像以上の売れ行きで、1970年代には、そのエンジンを他ブランドへ提供できる余裕が殆どなかったのだ。

1980年代に入ると、ローバー・グループが再編成。ホンダの協力を得た前輪駆動モデルが、ラインナップへ加わっていった。この頃までに、ローバー社のV8エンジンを積むグループ内のブランドは、ランドローバーのみになっていた。

しかし、21世紀が近づくと状況は変化した。今回ご紹介する3台は、すべて1992年に発売されている。そもそもTVRは、ローバーからV8エンジンを購入したパイオニア。1983年のTVRタスミンを皮切りに、V8 Sも成功させ、新モデルの機運を高めていた。

TVRグリフィスが発表されたのは、1990年の英国バーミンガム・モーターショー。V8 S用だったシャシーをアップデートするため、保証金が求められたが、数日のうちに注文は350台に達したという。

1963年のマーコスGTに似たグラマラスなボディ

グリフィスの設計を主導したのは、当時代表だったピーター・ウィーラー氏。リア・サスペンションはダブルウィッシュボーン式へ改められ、鋼管製のバックボーンシャシーは、フロアパンとバルクヘッド、ボディシェルと一体化され、高剛性化が図られた。

ローバーから購入した、燃料インジェクションの3.9L V8エンジンは、独自にチューニング。グレートブリテン島の中部、コヴェントリーに拠点をおいたTVRパワー社によって、最高出力は239psへ引き上げられた。

マーコス・マントラ(1992〜1998年/英国仕様)
マーコス・マントラ(1992〜1998年/英国仕様)

他方、TVRより少量生産を想定したマーコスには、そこまでの余裕はなかった。同じユニットが発揮した馬力は、ローバーが組んだままの189ps。それでも新しいマントラは、キットカーではなく同社初の正式な量産モデル、型式承認車に仕上げられた。

それ以前にマーコスが提供していたのは、キャブレターで燃料が送られるローバーの3.5L V8エンジンを積んだ、マンチュラ。設計はかなり古く、燃料インジェクション化された新しい3.9Lエンジンへ対応させるべく、シャシーには改良が施された。

フロント・サスペンションは、旧式なトライアンフ譲りではなく、フォード・シエラから流用したマクファーソンストラット式に。リアも独立懸架式へ変更され、トレッドが広がり、1963年のマーコスGTがベースのボディも必然的に拡幅された。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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