30年物のV8エンジン 古いシャシーも再利用! MG RV8 TVRグリフィス マーコス・マントラ(1)

公開 : 2024.03.17 17:45

再生産されたMGB用シェルが絶好の素材に

ランドローバーを傘下にするローバー・グループの一員、MGも、同様な動きを見せた。スポーティなイメージを持つブランドの、市場での存在感を維持するために。

コンパクトなミドシップ・ロードスター、MGFは1995年に登場する。だがそれより早く、V8エンジンを搭載したオープンスポーツが企画された。レストア市場向けに少量の再生産が始まっていた、MGB用のボディシェルが絶好の素材になった。

MG RV8(1992〜1995年/英国仕様)
MG RV8(1992〜1995年/英国仕様)

「プロジェクト・アダー」という名前で、MGBのボディを活用した新モデルの開発がスタート。しかし、当然に思えるが、1990年代として想定以上の変更が必要になった。

MGBのコンポーネントをそのまま流用できたのは、全体の5%。75%には改良が与えられ、残りは新設計された。それでも、2年足らずでMG RV8は完成している。

かくして、1992年に発売された、英国製V8スポーツを3台揃えてみた。特にモダンな容姿のグリフィスは、唯一、ゼロからスタイリングが描かれたことを主張する。ボンネットは低く滑らかで、ボディには不自然な付加物が存在しない。

ヘッドライトには滑らかなカウルが備わり、妖艶に表面がうねる。TVRが思い描いた、理想像が表現されたかのようだ。前後に絞られたフォルムが、それ以前のウェッジシェイプと一線を画す。深みのあるパープルの塗装は、1990年代の同社らしい。

クラシカルなロングノーズ・ショートデッキ

マントラは、明らかにクラシカルなプロポーションといえるが、ロングノーズ・ショートデッキは今でも魅力的。オーバーフェンダーが備わり、スタイリングは少々にぎやかに感じられるものの、それ以前より洗練されてはいるだろう。

1980年代のマンチュラは、似たプロポーションをまとうが少々新鮮味を欠いていた。しかし1990年代に入ると、時代が一周してスタイリッシュに見えるようになっていた。

TVRグリフィス(1992〜2002年/英国仕様)
TVRグリフィス(1992〜2002年/英国仕様)

MG RV8も同様にクラシカルで、フロントやサイドビューは美しい。ところが、リア回りは特に物議を醸した。トランクリッドとフェンダーパネルはMGB譲りな一方、テールライトやバンパーなどは専用設計で、後付け感が拭えない。

フロント周りは、ボンネットとフェンダーを新しくデザイン。ヘッドライトは、カウル付きの案も検討されたが、MGBとの違いが大きく見送られたようだ。1960年代の雰囲気を残しつつ、モダナイズしながら生産の続く、ポルシェ911も参考にされた。

ステアリングホイールを握ると、見た目と同様に、3台それぞれの個性を楽しめて面白い。最も荒削り感が強いのは、案の定、マントラだ。オールドファッションな、FRのスポーツカーらしいフィーリングに満ちている。

シートポジションは、路面へ触れそうなほど低い。平均的な身長のドライバーが座ると、目線もかなり低くなる。起源となるマーコスGTと同様に、シートはキャビンを構成するタブへソフトパッドが張られたもの。前後に移動するペダルで、姿勢を合わせる。

この続きは、MG RV8 TVRグリフィス マーコス・マントラ(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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