ドライバーの心は不完全燃焼? 同じV8を積む3台 MG RV8 TVRグリフィス マーコス・マントラ(2)
公開 : 2024.03.17 17:46
1990年代に1つの黄金期を迎えた、英国のV8オープン・スポーツ ローバー社の3.9Lユニットを積んだ3台 古いシャシーを再利用 英国編集部がその魅力を振り返る
もくじ
ー見た目通り1960年代的なマナー
ー最も快適志向なRV8 別次元のグリフィス
ー走りへ一致しないエレガントなインテリア
ー古典的な手法で火を付けようとした英国車
ーローバー製V8エンジンを積んだ3台のスペック
見た目通り1960年代的なマナー
マーコス・マントラのドライバーズシートへ座る。前方には、長くカーブを描くボンネット。ロッカースイッチと補助メーターが並ぶダッシュボードは、ジャガーEタイプ S3に似た趣がある。
3.9L V8エンジンは荒々しい。ペダルは重く、期待する反応のために力を込める必要はあるが、僅かに傾けるだけでスリリング。たくましいトルクが間髪なく生み出され、望まずとも、コーナーからの立ち上がりは全力になりがちだ。
ローバー社製の5速MTは、シフトレバーのストロークが長い。サスペンションは引き締まり、ステアリング・レシオはクイック。多少暴れても、即座にリカバリーできる一方、路面の凹凸を越えると跳ねるように揺れる。
ボディも共振を隠さない。日常的な環境で、マントラを意図通りに運転することは難しい。マナーは、スタイリング通り1960年代的。そこへ、モダンなダッシュ力と優れたブレーキが与えられている。便利なパワーウインドウも。
MG RV8は、TVRグリフィスとマントラの中間。リア・サスペンションはリーフスプリングが支え、構造としては旧式ながら、技術者は徹底的なアップデートを施した。
稀に減衰力不足を感じる場面はあるものの、乗り心地はソフトで遥かに快適。今回の例は日本から英国へ舞い戻ってきた車両で、エアコンとパワーステアリングが備わる。フォールディング・ソフトトップを背負った、グランドツアラーといえる。
最も快適志向なRV8 別次元のグリフィス
着座位置は、想像以上に高い。MGBより高いのは、肉厚なシートが理由だろう。ロールバーはなく、ウエストラインは低く、フロントガラス・フレームは細い。運転席へ座ると、上半身が顕になったような感じがする。
そのかわり、グリフィスやマントラと比べると、視認性は遥かに優れる。当時のローバー・グループは、RV8を弱点が少なく扱いやすいクラシックカーへ仕上げようとした。それを現すように、今回の3台では最も快適志向だ。
ところが速度が増すと、乗り心地には浮遊感がでてくる。隆起部分を通過すると、ステアリングホイールは不意に軽くなる。最高出力はマントラと同じ189psだが、車重は260kgも重く、さほど意欲的には加速しない。
0-100km/h加速は5.9秒がうたわれるが、その鋭さを体感するには、相当にエンジンを回す必要がある。そうすればキビキビ走れるものの、努力の継続は必要。惹き込まれるようなレスポンスはない。
最後にパープルのグリフィスへ。乗り比べてみると、特に動力性能で、まったく別のカテゴリーにあるといわざるを得ない。車重は1045kgで、1020kgのマントラより僅かに重いが、239psへ高められたV8エンジンが強烈なダッシュ力を見せつける。
TVRパワー社の技術者によって、レーシーでシリアスな特徴が与えられている。鋭く回転し、レッドラインまでリニアにパワーを生み出す。同じローバー由来の3.9L V8エンジンでありながら、明らかにスポーティだ。
画像 同じV8を積む3台 MG RV8 TVRグリフィス マーコス・マントラ GTとMGF 同時期の964も 全121枚