ドライバーの心は不完全燃焼? 同じV8を積む3台 MG RV8 TVRグリフィス マーコス・マントラ(2)

公開 : 2024.03.17 17:46

走りへ一致しないエレガントなインテリア

シャシーも、マントラやRV8とは別格。再設計されたサスペンションが、コーナー途中での路面変化にも対応する。剛性は明らかに高く、不安定さを招くボディの振動も排除されている。

ロックトゥロック2.2回転のステアリングの感触も、サスペンションの動きもタイト。2台とは比べ物にならないほど機敏に旋回し、ストレートではダーツの矢のように疾走していく。

TVRグリフィス(1992〜2002年/英国仕様)
TVRグリフィス(1992〜2002年/英国仕様)

ただし、比較的小径でパワーアシストのないステアリングホイールは、しっかり握っている必要がある。手のひらへ多くの情報を伝えるものの、舗装の乱れで、不意に進路が狂う場合がある。

雨天でなければ、正確に導け、前評判ほどの恐怖感はない。それでもホイールベースは短く、落ち着いた印象はない。右足や両腕で強めの入力を与えると、即座に反応する。

サスペンションは硬く、減衰力が強すぎる。試乗後に確認したところ、ショックアブソーバーの設定が完璧ではないことを、現オーナーは認めていたが。

エキサイティングなマナーと一致しないのが、エレガントなインテリア。ダッシュボードとセンターコンソールは、印象的なほど彫りが深い。ウッドパネルが控えめに用いられ、保守的なカーマニアも納得できる仕上がりだろう。

ドライバーの前方には、エアアウトレットが切られた長いボンネットと、フェンダーの峰が見える。威勢のいい走りを想起させるように。

古典的な手法で火を付けようとした英国車

今回の3台は、1990年代のドライバーの心へ、やや古典的な手法で火を付けようとした英国車だ。RV8は、その事実をローバー自ら主張していた。

しかし、RV8は期待したほど英国では売れなかった。唯一、日本市場が復活したブリティッシュ・スポーツを受け入れてくれた。

TVRグリフィス(1992〜2002年/英国仕様)
TVRグリフィス(1992〜2002年/英国仕様)

現在では、その頃のメルセデス・ベンツSLに劣らない2シーターとして、相応の訴求力を感じさせる。V8エンジンのサウンドに包まれながら、快適な長距離ドライブを謳歌できる。取り引き価格や維持費も、非現実的なものとはいえない。

1960年代のスポーツカーを30年後に蘇らせた、マントラの印象は鮮烈。1963年のマーコスGTは高すぎ、維持する自信がないという人でも、これなら手に届く価格帯にある。キャブレターの調整に、頭を悩ませる必要もない。

本来のV8スポーツという魅力では、グリフィスが2台を上回る。確かに、同時期の主要なライバルの方が、快適性では優れていた。ドライビングマナーや信頼性など、弱点がないわけではないものの、239psのパワーが今回の勝者といえる印象を残す。

ローバー由来のV8エンジンと古いシャシーへ手を加え、ポルシェ911に対峙できる走りを叶えている。しかも、2024年でもお値段は現実的なまま。1990年代前半に限らず、ブリティッシュ・クラシック・スポーツ全体で見ても、相当に訴求力が高いと思った。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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