【ライバルはスマートフォンです】 メルセデス・ベンツ新型Eクラス 3モデルを比較一気乗り
公開 : 2024.03.06 07:05
メルセデス・ベンツの新型Eクラスを早速試しました。今回はセダンとステーションワゴンに、ガソリンとディーゼル、更にはPHEVのラインナップです。最後に見えてきたのはEクラスの「盤石の安定ぶり」でした。
ついに日本で導入が始まった新型Eクラス
セダンとステーションワゴン、それぞれの車型と、3種類のパワートレインに試乗がかなった。
メルセデス・ベンツEクラスといえば、価格帯は青天井のハイエンドカーの中では基本のキながら、1台ですべてをこなす実用的ドライバーズカーとしてアガリともいえる車。
上にはSクラスやマイバッハのようなショーファードリブンが控えるが、Cクラスやハッチバックのようなベーシックがもち合わせない余裕はデフォルト、そういう立ち位置だ。新型はW114から数えてW124のような名車を挟み、新型はじつに6代目、W214型となる。
セダンの全長4960×全幅1880×全高1470mmは、先代W213より+20/+30/+15mmとマイルドに拡大し、その恩恵はおもに後席レッグスペースのような室内スペース拡大にあてられたという。
単独ブランドとしてのEQはなくなるとはいえ、EVに見劣りしない広々感、そして星を散りばめたグリルといったEQ風ディティールは受け継いだ。またステーションワゴンはリアエンドのスラントを強めた、よりスポーティなシルエットといえる。空力もセダンがCd値0.25/ステーションワゴンが同0.28とまずまずだ。
ヘッドライトは100万画素超えのマトリクスLEDで、E 350 eは車線から逸脱しそうな時に、路面のラインを自動的により照らす機能も初採用。テールランプも一新された。
インテリアで際立つのは、ダッシュボードのラインと一体化したエアコン吹き出し口と、全車オプション設定となり助手席にまで周り込むほど拡大されたMBUXスーパースクリーンだ。またダッシュボード上には車内用カメラがあり、これはZoom会議やセルフィ―に使えこそすれ、決してドライバーを監視しているわけではないという。
まずはE 200のセダン、続いてE 220 d ステーションワゴンの試乗を開始した。いずれもアヴァンギャルドだ。
コンサバ一辺倒のドライバーズカーではない
結論から述べておこう。新しいEクラスのライバルはもはや同じクラスや価格帯の車というより、令和のドライバーズカーとして大真面目にスマートフォンにケンカを売っている。
ようは、貴方のパートナーは電話機ではなくEクラスですよ、と。そういう強い主張を、あらゆる方向から囁いてくる。
というのも、センターディスプレイから(オプションの)助手席ディスプレイにまで展開する新世代MBUXが、充実どころか完結している。サードパーティーのアプリを直接ダウンロードできるため、Zoom等を入れれば車内でオンライン会議も可能だし、車両の5G通信でストリーミングの音楽も聞ける。
助手席側は別アカウントでログインでき、メールやメッセージ系などスマホ側のアカウントやテザリングが前提の機能もあるが、何なればアンドロイドやカープレイにエミュレートしなくても、個人のビジネスエクスプレスとして書斎として、用が足りてしまうほど分厚く完成度の高いインフォテインメントなのだ。
些細なことだがラジオの画面で、FM各局のロゴが3Dのカルーセルスライダーになっているのにも驚いた。他の輸入車ブランドのローカライズでは無論、国産車もサボりがちな表示ひとつのデザインにも、スキがないのだ。
ちなみに車載オーディオ、ブルメスター4Dサラウンドシステムは、音楽に合わせて照明の色やトーン、さらにシートに振動さえ伝えてくる。スマホにはできない何かだ。
なぜメルセデスがインフォテインメントに注力するかといえば、欧州ならびにドイツ人のGAFA嫌いは知られた話で、今や顧客のプライバシーを守ることは優先事項のひとつ。それは今日のセキュリティ感覚で、メルセデスが連綿と続けてきた安全神話の延長でもある。
メルセデスがエンタメ化したのではなく、質実剛健がデジタル・エンターテインメントをとり込みつつあるのだ。それこそEクラスというドライバーズカーの指標がリードすべき方向性であり、メルセデスらしい進化といえる。