欧州自動車産業を救う方法 ルノーCEOが提言 一貫性なき「規制」に警鐘、連携呼びかけ

公開 : 2024.03.06 06:25

いま欠けているもの、必要なものは何か

欧州の自動車メーカーの未来を築くには、何よりもまず、我々自身の起業家精神に基づくイノベーションが必要だ。我々は、新しい土俵にふさわしいビジネスモデルを考案し、新しい技術に投資し、手頃で持続可能なモビリティに向けた製品とソリューションを提供しなければならない。

過去3年間、ルノーは決して怠けていたわけではない。当社の提案の1つが、EVとソフトウェアの専門部門であるアンペア(Ampere)の設立だ。これは、東西双方からの課題に対する欧州自動車産業の最も実質的かつ包括的な対応だ。

ルカ・デ・メオ氏は欧州の官民連携を呼びかけている。
ルカ・デ・メオ氏は欧州の官民連携を呼びかけている。

しかし、自動車産業がその潜在能力をフルに発揮するためには、集団的な対応と、欧州の動員を調整できる公的機関も必要だと、今日、わたしは深く確信している。

キャリアのすべてをこの産業に捧げてきたわたしは、今日我々の前に立ちはだかる問いは極めて単純なものだと考えている。欧州は、単に期限や罰金を積み重ねるのではなく、全体的な大志をもって、真の産業政策を備えなければならない。

わたしの見解では、これは我々の最優先事項であるべきだ。明確な原則と目標、計画、そしてダイナミックな見直しプロセスが必要である。そうすれば、我々は常に適応できるようになる。

さまざまな当局の独断専行に対する対抗策として、モビリティと自動車規制のワンストップショップを設立しよう。中国の成功例に倣い、欧州全体で安定したルールと基準の枠組みを作り上げよう。

構造的なプロジェクトの出現のためのあらゆる条件を整え、主要技術において欧州のチャンピオンの出現を可能にしよう。欧州は過去にそうしてきた。その1つがエアバス社だ。

すでに大規模な自動車の移行が進行中であり、ここに関わる多くの産業の努力を最終的に調整することも、同様に急務である。なぜなら、この移行は、独自の革命が進んでいるエネルギー部門やデジタル部門など、他の部門全体の課題と絡み合っているからだ。

例えば、鉱業、化学、エネルギー、製造業に加え、インフラストラクチャー、国、地方当局など、すべてが協力し合う必要がある。

上流から下流まで、バリューチェーン全体にわたって、彼らの努力を組織化する必要がある。また、競合他社の動向にも注意を払い、適応し続ける必要がある。中国と米国の挑戦に直面した欧州は、独自のモデルを考案しなければならない。

民間主導と公的介入のハイブリッドモデルによって、まずは自らを守り強化し、中長期的には健全な競争の中で再び攻勢に転じることができるはずだ。

すべての人が自動車を買えるように

欧州の自動車メーカーは脱炭素化に全力で取り組み、電動化に2000億ユーロを投資している。しかし、メーカーは脱炭素化目標を歓迎する一方で、その達成方法について発言権を持つべきだと考えている。

そのためには、技術的中立性の原則を採用し、欧州の200の大都市にモビリティ政策の調和を促し、各国にグリーン経済開発ゾーンを設定して、企業、イノベーター、サプライヤーが資源と開発を共有できる産業やビジネス・クラスターの出現を促進することが考えられる。

ルノーが新たに市場投入する小型EV、5 Eテック
ルノーが新たに市場投入する小型EV、5 Eテック

重要なのは、コンパクトで手頃な価格のEV市場を開発し、都市や環境への影響を抑えながら、すべての人が自動車を購入できるようにすることだ。

数え上げればきりがないが、水素製造と流通のエコシステムの育成や、共通の目標に向けたソフトウェア開発などは、チーム・アプローチを必要とするバリューチェーンの具体例である。公的機関が戦略的優先事項として10項目を特定し、欧州規模で横断的イニシアチブを立ち上げよう。

関連するプレーヤーに連携を取らせよう。これだけで軌道に乗り始め、我々にふさわしいレベルまで引き上げられると思う。これらの課題は、政治家、メーカー、利害関係者、市民など、我々全員が直面している。

共通の対応と集団的動員への道を開くために、自動車を公共の議論の中心に戻そう。ここでは、わたしが提唱している提案のほんの一部を紹介したが、自動車産業を問題視するのをやめ、これを実証してほしいと願っている。それが解決策の一部となるだろう。

(筆:ルノー・グループCEO兼欧州自動車工業会会長ルカ・デ・メオ)

記事に関わった人々

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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