待ちわびた価値はあるか? 「セダン空白時代」に上陸する新型アコードの走りをチェック

公開 : 2024.03.07 11:30  更新 : 2024.03.07 11:55

段付きのエンジンサウンドに減速セレクター 操る楽しさ健在

ドアを開けて運転席に腰を下ろすと、目の前には現行ホンダ車に共通する水平基調のインパネが広がる。シートポジションやステアリングの位置を調整すると、運転席の前方視界の広さ、明るさに驚かされる。

ステアリング形状そのものはやや小ぶりで、スポーク部分が太めなスポーツカーテイスト。筆者は、もはや遠い記憶の彼方となった、CL7型アコード ユーロRを思い出した。

ホンダ・アコード
ホンダ・アコード    本田技研工業

シフトセレクターのDボタンを押し、アクセルペダルに載せた右足に少しずつ力を込めていく。停車時からは走行用モーターのみで動き出し、ロードノイズすら気にならないほどの静寂さとともに加速していく。

ただ今回の試乗コースは、アップダウンに富んだレイアウトのクローズドコースということもあって、すぐにエンジンが始動した。ただ、エンジンが発生する振動はグッと抑えられ、助手席や後席に乗っている乗員は、よほど注意深く耳を澄ませていないとエンジンの目覚めには気付かないだろう。

走行ペースを上げていくと、今度は爽快なエンジンサウンドが耳元に届くようになる。車速の伸びとエンジン回転数の上昇を連動させる「リニアシフトコントロール」により、ハイブリッド特有の無機質な加速サウンドではなく、従来のガソリンエンジン車に近いフィーリングを実現している。

もうひとつ、新型アコードの走りを楽しくさせているのが「減速セレクター」だ。これをもっとも減速度が強くすると、ワインディングを想定した試乗コースのほぼすべてを、ワンペダル操作で走行することができた。

若々しさを感じさせるスタイリングに、最新のハイブリッドシステム「e:HEV」を搭載、原点回帰ともいうべきスポーツハンドリングを兼ね備えた新型アコード。ホンダが掲げる「スポーツe:HEV」の可能性が確かに感じられた試乗となった。

予定どおりならば、2030年にはホンダの新車ラインナップからは純ガソリンエンジン車が消えてしまうが、それは決してホンダスポーツの灯が消えてしまうことではない。そう確信できたことが、なによりの収穫と思えた。

北米仕様のスペック(参考)

全長×全幅×全高:4970mm×1860mm×1450mm
駆動方式:前輪駆動
パワートレイン:直列4気筒DOHC 1993cc
使用燃料:ガソリン
システム最高出力:204ps
システム最大トルク:34.2kg-m
ギアボックス:電気式無段変速機

ホンダ・アコード
ホンダ・アコード    本田技研工業

記事に関わった人々

  • 執筆

    佐橋健太郎

    Kentaro Sabashi

    1973年生まれ。立教大学在学中に雑誌編集部のアルバイトを経験、卒業後も魅力が忘れられずに百貨店からネコ・パブリッシングへ転職。デイトナやカー・マガジン、ジェイズ・ティーポなどの編集部に所属し、2013年に独立。季刊誌「Honda Style」の編集長も務める。愛車は2006年式ホンダS2000と1965年式フォード・マスタング・ファストバック。
  • 編集

    香野早汰

    Hayata Kono

    1997年東京生まれ。母が仕事の往復で運転するクルマの助手席で幼少期のほとんどを過ごす。クルマ選びの決め手は速さや音よりも造形と乗り心地。それゆえ同世代の理解者に恵まれないのが悩み。2023年、クルマにまつわる仕事を探すも見つからず。思いもしない偶然が重なりAUTOCAR編集部に出会う。翌日に笹本編集長の面接。「明日から来なさい」「え!」。若さと積極性を武器に、日々勉強中。

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