「超!希少」な32番目の356/2 911 カレラ4 GTSとの共通点とは? 新旧ポルシェ比較試乗(1)
公開 : 2024.03.16 09:45
ドライバーズカーとして英国編集部が高く評価する、ポルシェ911 その源流にある、偉大な雛形といえるオリジナルの356/2 英国編集部が2台の比較で魅力を探る
ミドシップだった最初のポルシェ356
現代のポルシェ911には、多様な仕様が存在する。開かないルーフを背負い、公道での能力を追求したベーシックな後輪駆動のクーペだけではない。四輪駆動でソフトトップを備えるものもあるし、ルーフが半分開く911もある。
サーキット重視の仕様もあれば、最高速を重視したものもある。最近は、オフロードにも対応する「ダカール」が登場した。細かく分類していくと、合計26種類もの992型911が販売されている。リアエンジンという点では共通するが。
しかし今から80年近く前、ポルシェが自身の名前を冠して始めて作った小さなスポーツカーは、大きく違っていた。そもそも当初はドイツではなく、オーストリアの製材所で組み立てられていた。
ポルシェを創業したフェルディナント・ポルシェ氏と、彼の息子、同じくフェルディナントの名を継いだ通称フェリー・ポルシェ氏の親子は、2シーターのロードスターを設計。ポルシェ356の最初の試作車は、ミドシップだった。
シャシーは、複雑にスチール製パイプを組んだスペースフレームで、ボディは軽量なアルミニウム製。ポルシェは、現在でもその処女作を大切に保管している。
そして、量産仕様として改良を加えるうえで、フェリーはポルシェにとって馴染み深いレイアウトを採用した。彼の父は、フォルクスワーゲン・タイプ1、別名ビートルを設計していたためだ。
偉大なスポーツカーの雛形が誕生
かくして、最初期の356/2では、タイプ1由来の1089cc水平対向4気筒エンジンとトランスミッションが、リアにマウントされた。モノコック構造のシャシーと、サスペンションも基本的にそのままといえた。
この変更により、製造が容易でローコスト化できただけでなく、フロントシートの後方へ充分な荷室を用意することも可能になった。スポーツカーでありながら、実用性を担保することができていた。
第二次大戦後、予算の確保に悩んでいたオーストリア政府は、輸出を前提に356の生産を認可。1948年から1951年にかけて、外部サプライヤーの協力を得ながら、44台のクーペと8台のロードスター、合計52台の356/2が製造されている。
その後、親子はドイツ・シュツットガルトへ戻り、改良を加えつつ本格的に量産を開始。自動車史に刻まれる、偉大なスポーツカーの雛形が誕生するに至った。
この最新版といえるのが、992型の911だ。今回用意したのは、最高出力480psを発揮する、カレラ4 GTS。水平対向6気筒エンジンの排気量は3.0Lあり、ターボチャージャーで過給されている。
0-100km/h加速は3.3秒で、最高速度は308km/hが主張される。こんなに速くても、現在のラインナップでは特に公道を前提としたポジションにある。