「超!希少」な32番目の356/2 911 カレラ4 GTSとの共通点とは? 新旧ポルシェ比較試乗(1)
公開 : 2024.03.16 09:45
多様な911に通された1本の筋
現在の911は多様だが、共通する特徴があるといえ、筆者はそれが好きだ。オフロード前提のダカールと、サーキット前提のGT3 RSは大局的な仕様といえるが、それでも、1本の筋が通されているように思う。
リアエンジンだから、フロントノーズは比較的軽い。大きな金属の塊が存在しないため、ボンネットは低く短くできる。その結果、優れた前方視界が得られる。
確かに、カレラ4 GTSはサスペンションが引き締まり、舗装の管理状態が良くない英国の公道では、乗り心地が落ち着かない。BMWやメルセデス・ベンツなどと比べると、ロードノイズは大きい。
とはいえ、我慢できないレベルではない。速度域を問わず、それを凌駕する報酬をドライバーへ与えてくれる。特にステアリング・フィールは珠玉。フロントが軽いため、パワーアシストを強める必要がないためだ。
ソリッドな姿勢制御と、クルマとの一体感、得られる充足感は他に例がない水準にある。カレラ4 GTSの英国価格は、11万6690ポンド(約2205万円)とお高いけれど。
そっとドアを開き、とても貴重な356/2のシートへ腰を下ろす。最新の911との共通点は、あるのだろうか。
飛行機のように滑らかなボディ 繊細で上品な印象
このアイボリーのクルマは、32番目に作られた356/2で、オーストリアのタトラ社が部分的に製造している。スウェーデンのトラックメーカーで、かつてフォルクスワーゲンの輸入代理店をしていたスカニア・バビス社によって、スウェーデンへ輸入された。
しっかり、その歴史が文書として残っている。工場で完成したのは、1950年6月12日。同時に14台が輸出され、11月9日にスウェーデンへ到着。その9日後に、ニクヴィストAB社という自動車販売店に登録された。
これまで15名のオーナーが存在し、現在はロンドンの西部、チョーリーウッドに拠点を置くDKエンジニアリング社の名義になっている。同社はメカニズムのリビルドを終え、新たなオーナーを探しているという。買い手が付く前に、筆者へ1日貸していただいた。
飛行機のように滑らかなボディは、1980年代に再塗装されている。だがそれ以外は、きれいなインテリアも含めて、オリジナル状態とのこと。繊細で上品だ。
全高は、数字の上では1301mmに対して1300mmと、ほぼ同じ。だが、356/2の方が低く見える。細身のタイヤがフェンダーの内側に組まれ、ボウルを伏せたようなシルエットで、宇宙開発競争の激しかった時代のデザインにも見える。未来を予見したように。
1949年に、AUTOCARはスイス・ジュネーブ・モーターショーで発表された356を記事にしている。戦前のアウト・ユニオン・グランプリマシンのデザイナーが手掛けたエレガントなクーペは、技術的に大きな関心を生むと伝えていた。
この続きは、911 356/2 新旧ポルシェ比較試乗(2)にて。