911 カレラ4 GTSの「偉大な源流」 顕著なオーバーステア 英国最古の356/2 新旧ポルシェ比較試乗(2)

公開 : 2024.03.16 09:46

ドライバーズカーとして英国編集部が高く評価する、ポルシェ911 その源流にある、偉大な雛形といえるオリジナルの356/2 英国編集部が2台の比較で魅力を探る 

眺めているだけでうれしくなるインテリア

フォルクスワーゲン・タイプ1のメカニズムには、定評がある。ポルシェ356/2にも、それに通じる特徴を発見できる。華奢なリアハッチを開くと、フォルクスワーゲン譲りの水平対向4気筒エンジンが姿を現す。恐らく、当時の既存モデルからの流用だろう。

ただし、シングルではなくツイン・キャブレター。タイプ1の最高出力は25psだったが、フェリー・ポルシェ氏は苦労しながら40psを引き出した。それでも、992型ポルシェ911 カレラ4 GTSの、1割にも満たない。

アイボリーのポルシェ356/2と、グレーのポルシェ911 カレラ4 GTS
アイボリーのポルシェ356/2と、グレーのポルシェ911 カレラ4 GTS

車内は、眺めているだけでうれしくなる。大きなステアリングホイールに、柔らかいベンチシート。予想より勢いをつけないと、ドアはしっかり閉まらない。

シンプルなダッシュボードに、メーターは1枚だけ。992型ではタコメーターがある位置に、大きなスピードメーターが置かれている。修理中だという油圧計用の穴は、ラバー製の蓋がしてある。スイッチが、僅かに並ぶ。

ボディと同じクリーム色に塗装された車内は、いい感じの風合いのレザーとツイードというコーディネート。足元には、3枚のペダルがフロアから伸びる。シートの後ろ側には、素敵なカーペットで覆われた荷室がある。

小さなキーを捻りながら、アクセルペダルを軽く煽る。フラット4が目覚め、徐々に活発になっていく。アイドリング時は静か。シフトレバーの頂部には小さなボールがはめられ、ベンチシートの座面中央は変速のために少しえぐれている。

顕著なオーバーステア傾向のシャシー

一般的に、タイプ1のシフトフィールは良くないと考えられている。1951年に、ドイツ・シュツットガルト製の356を試乗したAUTOCARも、「トランスミッションは静かではなく、変速も簡単ではありません」とレポートしている。

32番目に作られた356/2の1速と2速には、変速時にギアの回転数を調整するシンクロメッシュが備わらない。ギアを抜いたら、クラッチペダルを踏み直し、丁寧にゲートを選ぶ必要がある。それでも、慣れてしまえば問題はない。

ポルシェ356/2(1948〜1951年/欧州仕様)
ポルシェ356/2(1948〜1951年/欧州仕様)

自分は1973年式のビートルを所有しているが、遥かに正確にレバーは動く。最後までエンストしなかったし、間違ったギアを選ぶこともなかった。ブレーキペダルのストロークは長いが、しっかり効く。

4000rpmで、40psの最高出力が発揮される。引っ張れば、確かにパワーが控えめに湧いてくる。ある程度の回転数に達すると、それ以上活発になることはない。

4速目はギア比が長く、巡航速度では低めの回転を保てる。最高速度は136km/hがうたわれるが、実際に届くまでに長い時間が必要なことは、承知済み。ウォームギヤが組まれたステアリングラックはスローで、速く走るには勇気が必要でもある。

今回試乗したロンドンの西、バークシャー州の道は、356/2をしっかり味わうには少し狭かったかもしれない。短いホイールベースとリアエンジン、スイングアクスルを組み合わせたシャシーは、顕著なオーバーステア傾向にある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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