【独自】地に落ちたビッグモーター板金工場 世界最高品質「ヤナセ」の仕事を請け負えるのか?
公開 : 2024.03.09 08:25
・伊藤忠のビックモーター買収で、傘下のヤナセとの関係は?
・ヤナセ板金工場のテュフ認証は、日本初、板金塗装工場として世界最高水準のプラチナ認証取得。
・特に注目すべきは「コンプライアンスに関する項目」
もくじ
ー伊藤忠、ビッグモーターの買収を決定
ービックモーター板金工場はテュフ認証を取得し、伊藤忠も高評価していた
ーヤナセの板金修理が世界最高といわれる理由
ービッグモーターの板金はヤナセの高い品質水準にこたえられるのか
伊藤忠、ビッグモーターの買収を決定
3月6日、伊藤忠がビッグモーターの買収を正式に発表した。
今回の事業再建契約では、ビッグモーターの中古車事業を新会社に承継し、残りの不動産事業などは旧会社に残すというもの。2023年11月17日に買収を前提に独占交渉権を取得したときからビッグモーター創業家と断絶。新会社の資本や経営などには一切関与しないとされる。
伊藤忠では、これまで資産査定を進めてきたわけだが、今回の正式発表においては「事業再建が可能であり、取り組み意義があると判断した」としている。
当初は4月1日に発足という情報もあったが、最新の情報では4月後半とされる。筆者が関係者から漏れ伝わってきた内容を総合すると伊藤忠→ビッグモーターへのデューデリジェンスは順調に行われており、正式に買収決定となるであろうという印象だった。
さて、買収の正式決定が発表されると同時に、驚きのニュースが入ってきた。
なんと! 同じ伊藤忠の傘下となるヤナセの板金塗装をビッグモーターが下請けとして請け負うという情報である。伊藤忠は2003年にヤナセへ資本参加し、2017年度第2四半期に同社を連結子会社化している。
ヤナセとビッグモーター…この2社が協力体制を敷くようになるとは! 兼重親子が退陣し新体制になったあとでも、全く想像することはできなかった。筆者自身、伊藤忠が支援検討を発表してからは「そういえば伊藤忠の傘下にはヤナセもあるなあ」程度の印象であった。
というのも、ヤナセの板金・塗装品質はすさまじく高く、国内最高峰、いや世界最高峰といってもいいレベルだ。評判が奈落の底に落ちたビッグモーターと雲上ブランド“YANASE”との協業など夢にも思わなかった。
なお、ヤナセの板金塗装部門は「ヤナセオートシステムズ」(本社:港区芝浦/横浜オフィス:横浜市)という、株式会社ヤナセ100%出資の関係会社が展開しており、板金/塗装(BP)事業のほか、輸入車パーツ&アクセサリー販売事業(エリアセンター)/リサイクル事業を主力事業としている。
ビックモーター板金工場はテュフ認証を取得し、伊藤忠も高評価していた
さて、話を伊藤忠の買収に戻そう。伊藤忠は全国各地のビッグモーターの施設、資産などを評価するデューデリジェンスを詳細に行ってきてこのたびの「買収正式決定」となったわけであるが、これまで筆者が聞いてきた中では伊藤忠はビッグモーターの板金工場にとくに強い関心を寄せていたという。
筆者もビッグモーター板金工場のハード面におけるレベルの高さについてはいくつかのメディアでコメントしている。
ビッグモーターの板金工場は現在本社機能がある多摩店を筆頭に、2019年にテュフ・ラインランド・ジャパン(TRJ)のゴールド認証を受けており、そのことはビッグモーターが珍しくメディアに対して積極的に公表していた。
ビッグモーターの広報部門は騒動後の2023年8月にやっと設置されたわけで、それまでメディアからの問い合わせには基本応じていなかった。しかし、唯一この「テュフ認証」だけは大々的な発表を行ってきたのである。
2019年4月8日のリリースでは、第一弾としてフラッグシップ工場の「多摩店」が非常に高レベルの修理ができる工場に対する「ゴールド認証」(スチール限定)を取得したことを公表。その後、同年6月27日には全29工場がTRJのゴールド認証を取得しており共同記者会見まで開いていた。
ちなみに、TRJ認証のための申請作業については、非常に煩雑な手続きが必要でビッグモーター元社員いわく「認証作業はどこも損保の社員が頑張ってやってましたよ」とのことである。当時はすさまじい数の修理を請け負っていた時期ゆえ、ビッグモーターの社員が認証作業に関わることはほとんどなかったのだ。