【独自】地に落ちたビッグモーター板金工場 世界最高品質「ヤナセ」の仕事を請け負えるのか?

公開 : 2024.03.09 08:25

ヤナセの板金修理が世界最高といわれる理由

ちなみにヤナセの板金工場もテュフ認証を受けており、こちらは板金塗装工場として日本で初めて世界最高水準のプラチナ認証を2016年11月1日に取得。

2017年10月11日には6拠点がテュフ・ラインランド板金塗装工場認証基準の「プラチナ」/2拠点が「ゴールド」の認証を取得しており、直営9拠点すべて認証取得となっている。なお、テュフ認証は2年ごとに更新が必要で、ヤナセはきちんと認証の更新をしているがビックモーターは2019年以来、更新はしていない模様。

伊藤忠のビックモーター買収発表で、今後のヤナセとの関係はどうなる?
伊藤忠のビックモーター買収発表で、今後のヤナセとの関係はどうなる?    加藤久美子

ヤナセの板金修理の品質は国内最高、いや世界最高水準にあるとされる。

全国9か所のコントロールセンターを中心に、全国約300か所の協力工場をネットワーク化。独自のWebシステムとネットワークで、事故車修理において、自動車メーカーが提供している車両本来の性能復元を目指し高品質なサービスを提供。

ヤナセグループに入庫する車両だけではなく、損保各社や各ディーラー各社からの修理依頼にも対応し、輸入車を中心に年間6万台以上の修理実績がある。

その証拠にヤナセオートシステムズでは、ヤナセが正規代理店となっているメルセデス・ベンツBMW、GMなどのブランドの他にフェラーリランボルギーニテスラなどの「メーカー認定工場資格」を取得している。板金塗装といっても単に外側を綺麗に仕上げればいいというものではない。本来持つ走行性能を100%復元する作業も必須なのである。

ビッグモーターの板金はヤナセの高い品質水準にこたえられるのか

ヤナセ広報担当者に「ビッグモーター社の板金工場がヤナセの下請けとして機能するようになるのか?」と確認したところ「ビッグモーター社の件は、これからのことは判りませんが、これまでのところご案内のような協働のお話は全くありません」との回答であった。

ビックモーター内でもまだ上層部のみが知る情報らしいが、もう一つ。ヤナセの協力工場として機能するにあたって重要なことがある。それは、協力工場で構成される「ヤナセ・ザ・ボディショップ・ネットワーク」に加盟するための厳しい条件をクリアできるのか? というところだ。

伊藤忠のビックモーター買収発表で、今後のヤナセとの関係はどうなる?
伊藤忠のビックモーター買収発表で、今後のヤナセとの関係はどうなる?    加藤久美子

特に注目すべきは「コンプライアンスに関する項目」の中の以下2点である。
・道路運送車両法に定める「認証工場」道路運送車両法に定める「認証工場」または「指定工場」であること。
・官公庁に対する諸手続を加盟工場、自らの責任で行い、消防法などの公的基準を満足していること。

実はビッグモーターではこの数か月の間に本社のある多摩店(東京都)/つくば店(茨城県)/古賀店(福岡県)などの板金工場を閉鎖している。ビックモーターの板金工場は大手損保の入庫紹介が停止した2022年6月以降、入庫が激減。毎月1億5000万円ほどの赤字を出し続けており、売り上げ激減による工場閉鎖や人員削減も相次いだ。

しかし、2月に閉鎖された多摩/つくば/古賀の3工場の閉鎖については売り上げ激減と共に別の理由もある。

それは、消防法などの法令違反の疑いがあるということだ。詳細は明かされていないが、それが真実ならヤナセのネットワークには当然加盟できない。ということで、いったん閉鎖し、法令関係への対応を済ませたあと再び板金塗装工場として再開するのではないかと予想される。

多摩店の工場は2月半ばに閉鎖されるという話を聞いていたので、閉鎖前の2月上旬に行ってみた。板金工場はしっかり稼働しており、駐車場には修理待ちのクルマ? で埋め尽くされており、明るく清潔な工場の中では何人かが修理作業を行っていた。

その後、3月4日に訪れた際には店のほうは営業時間内であったが、板金工場は完全に閉鎖されていた。シャッターを下ろされ、駐車場には一台もクルマが停まっていなかった。

ビックモーターの板金工場は、設備は素晴らしいものがあるが、実際に現在は人員からして全く足りてない。また中には非常に高レベルの板金塗装技術を持った作業員も残っていると聞くが、全国展開する工場で高品質の修理を提供するには圧倒的に数が足りていない。

新会社となって大々的に板金塗装の作業員を募集すると思われるが、そこからヤナセの要求を満たす高品質な作業がおこなわれるまでには相当厳しいトレーニング、コンプライアンスの徹底含めて多くの高いハードルと向き合うことになりそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

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    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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