アプリを使って車内でカラオケ? BYDオートジャパンの2024年戦略と仕様変更されたBYDアット3

公開 : 2024.03.12 19:35

BYDは仕様変更されたアット3の披露と時を同じくしてBYDオートジャパンの2024年戦略を公表しました。今後全国30カ所以上で「触れれば分かるEVの疑問」と題した実車展示キャラバンを行う予定も。

BYDオートジャパン2024戦略発表会

3月に入って早々にBYDオートジャパンが東京・品川で2024年の戦略発表会を行い、同時にアット3の仕様変更アップデート版を披露した。

昨今、主要国の新車市場でEV販売にブレーキがかかっていることは周知の通り。自動車メーカー各社も電動化戦略における「なるべく早い時期での100%EV化」というニュアンスを多かれ少なかれトーンダウンさせ、ハイブリッドの割合像もしくはICEとの共存へと軌道修正を図る中で、注目度の高い記者会見の場となった。

BYDオートジャパン2024戦略と仕様変更されたアット3を発表
BYDオートジャパン2024戦略と仕様変更されたアット3を発表    BYD

登壇したのは3名、BYDのアジア・パシフィック総経理で日本でグループのトップを務める劉学亮と、BYDオートジャパンの代表取締役である東福寺厚樹そして同マーケティング部長の遠藤友昭だった。

3者とも異口同音に口にしたのは、まだ日本で乗用車を展開して1年ほどのBYDが浸透し始めているのは、パートナーであるディーラー関係者と報道陣、そして何よりアット3やドルフィンを選んでくれたユーザーのおかげ、という感謝の意だった。

モビリティ分野「7+4+2」というキーワード

わけても劉総経理が強調したのは、以下のポイントだ。まず二次電池の研究開発から起業した歴史と、公共交通インフラの電動化を進め、EVバスでは70%以上のシェアを占めるほどグローバルに成功を収めている実績。

次いで乗用車については、昨年は302万台のEVを含む620万台の新エネルギー自動車を販売したという規模、そしてBYDに3ブランドを加えた4チャンネルでグローバル販売を加速させ、ドイツで行われるサッカーのユーロ2024の公式スポンサーを務めるという直近の展開。

BYDオートジャパン2024戦略と仕様変更されたアット3を発表
BYDオートジャパン2024戦略と仕様変更されたアット3を発表    南陽一浩

さらに印象的だったのは、日本でも新たにアップデートされたアット3を発表を機に、自動車のイメージが強かったが新エネルギーテクノロジーカンパニーとして「(ソーラーなど発電で)とり込む・(二次電池に)蓄える・(モビリティ機器に)応用する」という将来的なビジョンをも示したことだ。

ようは将来的にBYDの日本でのビジネスはグローバル同様、EVバスやEV乗用車だけにとどまらないであろうことを意味する。BYDの定義する「グリーン・トランスポーテション・システム」というビジョンの中で、新エネルギーによって駆動するモビリティ分野は「7+4+2」というキーワードで表される。

7とは市井を走る乗用車/バス/タクシー/シャトルバス/トラックなど運送車両/建設車両/(ごみ収集などに従事する)衛星車両のこと、4とは港湾クレーン/物流倉庫/鉱山などの採掘/空港内シャトルバスといった産業インフラ内で用いられる機器や車両、そして2が有人ドローンやリニアといった次世代交通システムだ。

社会全体に新エネルギーのフローをくまなく浸透させることで、炭素排出量の大きな削減効果を得るというBYDのビジョンは壮大で、魅力的でさえある。

だが劉総経理がスピーチで込める熱量、時に声を張り上げるような独特の説法には、中国のリーダー特有のプレゼンテーション・メソッドというか、聴衆の意志に関係なく強いメッセージを突き通すような、あの高度な管理社会ならではのトーンを認めない訳にもいかない。

自動車はどの国でも重きをなす産業で、EVはひとつのツールとして、各国に何をもたらせるかという観点から、BYDは技術を提供していくのみと、氏はいう。中国のグローバル企業としての宿痾をBYDが外的要因としてどう克服していくか、まだ日本では端緒についたばかりといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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